(二)-21

「君みたいな人と暮らしたいって言われたの……」

 みなみは小さく言った。

 それは確かに私も言われた。行為が終わった後に。彼の腕の中で彼の胸板を撫でていると、彼は私の耳元でそうささやいてきた。

 言われたとき、私は幸せな気分になった。正直に嬉しかった。

 でも、この人となら結婚してもいい、とまでは思わなかった。理性では危険信号が灯っていた。確かにそんなセリフ言われることなんて日常生活ではない。そんなふうに言ってくれるなら、自分を預けてもいいとも思う。

 でも、言うタイミングからすると、それはウソだと直感したのだ。そういうこと言うなら、行為の後ではなく、普段から言って欲しい。そうでなければ、単に性行為の対象としてだけ見られているということになる。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る