ええ…? 私なんかでいいんですか?
『ある意味では危機感を抱いているという面もあるんだ』
メロエリータが言ったその言葉を、私は何だかすごく不穏な感じに捉えてしまったけど、メロエリータ自身はそんなに深い意味で言った訳じゃなかった。このくらいのことは、国同士の関係では普通のことで、『隣国が急に大きな力を持つということに対して警戒しない方がおかしい』っていうレベルの話らしい。
だからあくまで、『ブラドフォンセス王国としても同じように力を蓄えたい』っていうだけの話だったみたいだ。
でもこの時の私はそれでちょっとドキドキしてしまってた。ツフセマティアス卿に招かれて夕食を一緒にした時にも、ここで何か失礼があってブラドフォンセス国王陛下に悪い印象を与えてしまうような報告をされたりしないかって緊張してしまって、せっかくのごちそうの味も殆ど分からなかった。
「うう…食事するだけでこんなに疲れるとか…」
夕食の後、自分達の宿に戻った私は、気疲れしてしまってぐったりしてた。メロエリータに慰めてもらおうと思っても彼女はツフセマティアス卿とまだ話があるらしく戻って来てない。
「あ~……私には荷が重いな~。さっさとこっちにも支社を作って、よろしくやってもらいたいよ~……
おうち帰りたい……」
とか、子供みたいに落ち込んでた。
するとその時、コンコンとドアがノックされた。
「は、はい…! どうぞ」
宿はツフセマティアス卿の兵士が警護してるから、誰かが勝手に部屋に近付くことはできない。だからてっきり兵士の人が伝言か何かを伝えに来たんだろうと思ってこう応えた。でも、ドアが開いて姿を現したのは、
「キラカレブレン卿…?」
そう、キラカレブレン卿だった。彼も寛ぐ時の平服に着替えて、公人としての姿とは違う柔らかい雰囲気になってた。
しかも、手には酒瓶とグラスを持ってそれを掲げて、
「良い酒が手に入ったので、一緒にいかがかと思いまして。女性の部屋に来るには失礼かと思いましたが…」
と穏やかに微笑みながら言ってきた。
「ええ…? でも、私なんかでいいんですか?」
ついそんな風に訊き返してしまう。すると彼はニコッと笑って、
「カリン殿がいいんです。貴女とこうして酒を酌み交わしながらゆっくりお話がしたかったんですよ」
とか何とか。
それがまたまるで映画か何かの一シーンみたいにサマになってて、必ずしも<イケメン>って感じの美形じゃない彼がちゃんとした<男前>に見えた。と言うか、見た目だけのチャラ男なんかじゃ絶対に醸し出せない<
だから何だか胸が『トゥンク…』ってしちゃった気がしたんだよな~。
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