こんなもん見せられたら、そりゃ普通の人は正気失うよね

私は、企業の正義、組織の正義を優先して公器としての使命を忘れた企業は嫌いだ。これは綺麗事とかじゃなくて、そういう姿勢が結局は社会のモラルを低下させるとしか思ってないから。それは社会にとってはむしろ害悪だよね。


だってそうでしょ? 名だたる企業からして法律なんか守る気ないって態度なんだよ? そんなんでどの口が『法律を守れ』だの『ルールを守れ』だの『規則を守れ』だの言うのよ? ほんっとそういうの虫唾が走るんですけど?


ズルいこと汚いことをした方が儲かるっていうのなら、そこまでしてまで儲けたい奴にやらせとけばいいじゃない。あんまり儲からないからって、本当に損しかない訳でもないのに投げ出すのって無責任としか思わない。そんなことやってる人に<責任>とか言ってもらいたくない。


もしかしたら私もこれから、そういうことばっかり言ってられなくなるかもしれない。だけどね、私の目的はお金儲けじゃないの。目的を果たす為には儲けなきゃいけないんだとしても、それはあくまで目的を果たす為の<手段>。目的を忘れて手段が目的化したらそれはもう死んだようなもんだと思う。


なんだけど、なにこれ…?


私の前に置かれたのは、見たこともない金貨の山。クレガマトレンとレンガトレントでの大豊作で大変な利益が出たそうだった。で、その利益分配での私の取り分だって。


私とアウラクレアとメロエリータの取り分は、一対一対八。それでこれ? じゃあメロエリータのところに入ったのってこれの八倍ってこと!?


…頭痛い……


こんなもん見せられたら、そりゃ普通の人は正気失うよね。私は元々お金とかそんなに興味ないからまだ平気だけど、手段が目的化するのも無理ないのかなあ。


「メロエリータ……このお金、預かってて。私もカリン商会に出資する。このお金でもっともっといろんなことをしたい」


そう言って私は、生活費に必要な分だけ手元に残して全部をメロエリータに渡した。アウラクレアも「じゃあ私も」と言って同じように差し出した。するとメロエリータは、


「分かった。必要になったら言ってくれ。カリン商会として有益なことであればすぐに出す。


あと、今回、私個人としての収入を使って、金貸し業を始めようと思う。これからは金そのものが価値を持つ時代になっていくと私は睨んでいる。その仕組みを確立させ、機先を制すのだ。どんなものでも仕組みを作った者が結局は有利だからな。後に従うものはどうしても後手に回らざるを得なくなる。


いずれは<兵力>以上に<資力>がものを言うようになっていくだろう。私はこの国の為に<資力>を磨きたいのだ!」


だって。


私、もしかしてものすごいことの始まりに立ち会ってる……?


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