斜に構えて「どうせ世界なんてこんなもの」とか言うのなんてただの中二病とかでしょ

レンガトレントでも堆肥の確保と農地への分配を始めるにあたって、当然、そちらでも奴隷を確保することになった。こちらでも基本的には売れ残りの奴隷を充てる。そして、そのリーダーには、リレの下で仕事を学んだラミを据えた。


それにあたって、私は、ガーラフェイルとウォレンタルマに奴隷の使い方についても注意をお願いした。


「この仕事は、奴隷達がきっちりと役目を果たしてくれないと成り立たないから、牛や馬と同じように大事に使ってほしいの。それができないと任せられない」


ときっぱり言わせてもらった。これで不満顔をするようなら、正直、他の人を探してもらおうと思った。だけど二人は、


「ああ、牛や馬と同じようにね。分かった分かった。大事に使うよ」


「問題ない…」


と快諾してくれた。その様子に安心するとともに、これでレンガトレントでも上手くいくと私は確信した。


「じゃあ、ラミ。向こうでもしっかり頼むね。だけどもし何か問題が起こったら私に知らせて」


「はい…」


ラミもリレと同じでずっと虐げられてきたから最初はすごく怯えてて殆ど喋ることもできなかった。右足が不自由なのは、親の虐待で骨折してまともに治療してもらえなかったかららしい。しかもそれが理由で捨てられて奴隷になった。


だけどそんなのはここじゃ珍しい話でもない。まともに働けそうにもない子供を養う余裕もこの世界の親にはない。だからって、自分で子供を壊しておいて使い物にならなくなったから捨てるってのがまかり通る社会が少しでも変わっていってほしい。


地球でもそういうのが変わっていくのに何百年もかかった。だからここでもきっとそれくらいはかかるんだろうな。でも何もしなくちゃそのままだ。


この子達も、上手く使ってあげれば仕事はできる。仕事ができるならそれに見合った報酬が支払われるべきだと私は思う。


まずはその基本のところから始めよう。


研修が終わり、ガーラフェイルやウォレンタルマと一緒に、ラミを含めた奴隷達五人が荷馬車に乗ってレンガトレントへと向かった。彼女達が向こうで調達した奴隷達に仕事を教えてくれることになる。


いずれ生産量が増えて実入りが増えて余裕が出てくると、敢えて奴隷じゃなくて一般の労働者を雇うような形のところも出てくるかもしれない。そうなるとまた奴隷達には厳しい仕事しか回ってこなかったりするかもしれない。けれど、そういう行きつ戻りつを繰り返すのも歴史の常ってものなのかな。


でもね、そんなこともありつつも良くなっていこうとするのも人間なんだと思うんだ。


私は、この世界の人達をただ愚かで無能なだけの人達だとは思わない。


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