何でもかんでもとんとん拍子に行くほど甘くはないね~

奴隷にされる人間は主に三種類いる。


一つ目は元々卑しい種族とされてる人達。そもそもの理由は分からないけど、そうやって迫害を受けてる人達がいるらしい。これが一番多いパターン。


二つ目は魔法の適性がまったくない人達。それこそ、ウンチを処理する程度の魔法も使えない人は存在そのものが卑しいとされて親からも見捨てられて奴隷として引き取られてしまう。


そして三つ目として、リレのように生まれつき外見上の問題や奇形がある人達。ある程度以上の学習障害もこれに含まれる。


本当に、こうやって他人を蔑もうとするその性根こそが私は卑しいと思う。何の問題もない風に生まれても性根がどうしようもなく腐ってるのもいるのに、そういうのは放っておいて分かりやすく蔑む相手を見付けて自分を上に見るというのが心底嫌だった。


自分の中にもそう思ってしまいそうになる部分があるから余計に。


なんて、あんまり考え込むと気分が沈むから自重してるけどさ。


なんにせよリレの存在はすごく助かった。彼女が私の指示をちゃんと理解して雑用をこなしてくれるから、その分、私は研究に集中できたし。しかも、顔の痣の所為で奴隷になっちゃっただけでウンチを処理する程度の魔法は彼女も使えたから、当然、彼女にも<堆肥化の魔法>を教えて協力してもらった。


でも、アウラクレアとリレとの関係にはさすがに気を遣ったな。露骨にリレにきつく当たったりはしなかったけど、明らかに避けてるし。だからリレの部屋は、物置の一角を整理したものだった。なるべくアウラクレアの傍には近寄らないようにしてもらったし。


アウラクレアも、決して悪い子じゃないんだ。奴隷と見れば悪態を吐いて大して理由もないのに暴力を振るうのも多い中、そういうことは好ましくないって思ってる子だし。奴隷が当たり前にいる環境に育ったから、見下す癖が染みついちゃってるんだろうな。


そういうのを別にすれば、奴隷以外の人には愛想が良くて当たりが柔らかくて顔が広くてすごく助かってる。バンクハンマの協力が得られたのも彼女のおかげだから。


「クレア。ありがと。あなたがいてくれて本当に助かった。でもだからこそリレのことは大目に見てほしいんだ。彼女も私の研究には必要なんだよ」


彼女が作ってくれる夕食を食べながら、私は頭を下げた。そんな私に、彼女も戸惑いながら、


「…それは分かるけど……」


と言ってくれた。


先は長い。ここでちゃんと地盤固めをしておかないと私のしようとしてることなんて簡単に頓挫してしまうと思う。


身近な人の気持ちもしっかり掴まないで、大きなことなんてできないと思うんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る