この世にはね、特殊性癖の猛者しかいない訳じゃないの!

もし、ロマンチックな展開とか萌えを意識した展開とかを、リアルな中世ヨーロッパで行おうとして、その当時の人々の暮らしとか街の様子とかを詳しく描写しようと思ったら、当然、道端にうず高く積もったウンチとかに触れないのはおかしいと思うのよ。


でも、考えてもみなさい? 主人公とヒロインが熱く見詰め合うそこは、ウンチやおしっこが発酵した、目に染みるような臭気がべっとりとまとわりつくような場所なのよ? どんなイケメンでも萌えキャラでも、足元は道に落ちてるウンチを踏みまくってドロドロで、服の裾まで撥ねたウンチやおしっこで汚れてんのよ? そんなんでときめける? 萌えられる?


そりゃ、中にはそれでもOKっていう特殊性癖の猛者だっているでしょうよ。でもそんなの、ごくごく一部分の極めて少数派だと思うけど?


だからってそういう描写を徹底的に排除したら、それのどこが<リアルな中世ヨーロッパ>なの?って話よね。これっぽっちもリアルじゃないじゃん? だから、気軽に読める見られる大衆娯楽としてフィクションの舞台としては、そういうのがない、その辺りがちゃんと対処されてるっていう前提の世界でなきゃ、安心して<ロマンス>や<萌え>に浸れないでしょ?


そう考えれば、<中世ヨーロッパ風の舞台>でそういうのをするには異世界にでも飛ばされるしかないってことよ。ちょっとでもリアルな描写とか設定に拘るなら、最初からウンチもおしっこも盛り上がる場面から排除されてる世界でないと無理!


なんて、またまた脱線してしまったわ。


と言うか、私、なんでこんなにムキになってるのかしら?


まあいいわ。とにかく私が飛ばされた異世界はそういうところだったんだけど、何の当てもない、ここで通用する通貨も持ってない、言葉も通じない女に残されてるのは、このまま野垂れ死ぬか奴隷か娼婦にでも身をやつして何とか生き延びるしかないって感じだった。


それこそ絵に描いたような<中世ヨーロッパ風>の街並みの中を彷徨い歩く見慣れない風体の女を、みんな訝しげにちらちら見てただけだった。


ここの人達の格好も、テンプレそのままって感じの昔風のだったから、実験で汚れても大丈夫なようにトレーナーとジャージに着替えてた私の格好は、それこそ奇異に映ったでしょうね。


お腹が減っても喉が渇いても何も買えずただ恨めしそうに屋台とかを横目に見ながら何か状況を打破するヒントはないものかとうろついた私は、でもどうにもならなくて力尽きて、広場みたいになったところの噴水で水だけを口にして座り込んでしまったのだった。


生水を飲んだらまずいかもと思ったけど、背に腹は代えられなくてね。


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