魔法って何? 実は微生物が起こす物理的反応だった?

世の中にはとにかくリアルな設定、リアルな描写をフィクションに求めるのがいるみたいだけど、私に言わせればそんなの、『ちゃんちゃらおかしい』って感じだった。


だってそうでしょ? 大衆娯楽のフィクションで、人間の生理現象についても徹底的に描写してるのとか、そんなにある? 少なくとも私は見たことないわ。そういうのに触れない時点でリアルも何もあったものじゃないでしょ。


私はね、汚いトイレは許せないけど、普通の人が生理的嫌悪感を覚えるような、不潔だと毛嫌いするような生物の生理現象そのものを嫌ってる訳じゃないのよね。なにしろそれこそが<生きている証拠>の一つなんだから。


排泄だって然り。それから目を逸らしてるようなのは信用できないの。


フィクションってのはただの娯楽だから別にそこまで求めてないわよ。でもだからこそ、フィクションにリアルを求めるのが筋違いにしか見えない。フィクションにおけるリアルなんて、ただのスパイス程度のものでしょ。それをどの程度効かせたものが丁度いいかなんて、完全に個人の好みでしょうが。『自分の好みこそが至高』とか、そんなの、知ったことじゃないわよ。


って、話が脱線してしまったわ。


まあそれはさて置いて、取り敢えず今、私がいるこの世界では、さっきも言った通り<魔法>が発達してるんだけど、それはどうやら、この世界に充満してる大気の成分が影響してるみたいなのよね。


私がこうして生きてられるってことは、少なくとも酸素濃度が地球とほぼ同じってことなんでしょうね。でも実はそれだけじゃなくて、ここの大気には<マナ>って呼ばれる気体が含まれてるみたいなのよ。


厳密な測定器みたいなのがまだないからはっきりしたことは言えないけど、何となく印象として、酸素濃度は約二十パーセント、窒素約七十パーセント、そしてマナが十パーセント弱で、残りがそれ以外って感じかなと推測してる。


人間を含むここの生き物は、酸素と一緒にマナも呼吸して、そして体内に共生してる微生物がマナを<魔力>に変換することで魔法が使えるみたいなんだよね。


しかも、マナを魔法に変換する微生物は、この世界の食品を摂取することでかなりの確率で取り込むことができて、その微生物の定着率と、一度に吸気するマナの量によって使える魔力の強さが決まるって感じなのかな。


更に魔法というものそのものが、この世界に存在する微生物に働きかけることで具象化するみたい。


大気中に漂う微生物に働きかけることで浮力を得たり、水に住む微生物に働きかけることで水を操ったり、土に住む微生物に働きかけることで土を操ったりってことで。


だから、大気中の微生物に働きかけて空気のレンズを作り、顕微鏡のように小さいものを拡大して見るってこともできるのよ。それを教えてくれたのが、この世界に飛ばされた私を保護してくれて魔法を教えてくれた<師匠>なのだった。


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