翌日、一階の受付前で被害者を待ちながら、今朝後藤さんに言われた事を反芻していた。



『昨日の本店のヤツは、元暴走族という噂だ。SPで、仕事は出来るらしいがな』



そんな人が、あっちの人?


僕自身、あっちの知識は、全くと言っていいほど無い。


それより、元暴走族というのが気になる。

喧嘩とか血とか苦手で、高校にもヤンキーは居たけど避けてきたし、こんなんでよく警察官になれたと自分でも驚いている。


はあ…。気が重いな。


一つ息を吐いたところで、自動ドアの向こうに、車が入ってくるのが見えた。


迎えますか。


正面入口で待っていると、車から降りた2人がこちらに向かって歩いてくる。


「如月愛さんですか?」


僕の姿を確認すると、コクっと頷いた。


「今日は、わざわざご足労頂きありがとうございます」



今度は、小さくお辞儀をした。


声、訊いてみたいな。


フードを被り、メガネにマスクをしているので、顔すらよく確認出来ない。


顔も見てみたい。



「それでは、どうぞ中の方へ」



僕が自動ドアを開け、中に入ると2人も続いた。

隣に居る人が、例の元暴走族という本店の人か。

いかにも昔、ヤンキーだったて感じだ。

これはもう確定でしょ。


2人がちゃんとついて来てるか、階段の手前で確認するため後ろを振り返ると、何やら2人は、頬を寄せ合い小声で会話をしていた。

何を話してるのかな?あんなに顔を近づけて。やっぱり2人はつきあってるのかな?



気になる!




2人を会議室に通すと、後藤さんが待ち構えていた。


長机を挟んで座ってから、お互い身分証を見せる。


「須藤です」 

  

えっ?!この人、警部なの?仕事が出来るというのは、本当なんだな。


でも、もっと驚いたのは如月さんの反応だ。


僕達と同じように、須藤刑事が警部だと知って驚いてるようだ。

しかも、如月さんのその反応に、須藤警部も照れてるようだし、2人の関係がますます気になる。


それから通常通り、住所、氏名、年齢、職業を訊く。

僕は、スラスラと事務的に書き留めながら、必死に内容を覚えようとしていた。

この住所は、管内じゃないか…。

坂の上にある向川高校の反対側かな…。


事件の経緯を訊いていくと、如月さんは昔、男相手に売春行為を行っていて、被疑者は、その時の客だという。


何だ。如月さんは、こんな事、何て事なくて、男を取り込む事なんて、なんとも思ってなくて、自業自得なんじゃん。


なんだよ……僕まで騙された。もっと知りたいなんて……。


バン!


そんな空気になっていた時、須藤警部が、机を叩いて立ち上がった。


「愛ちゃん、ごめんね。愛ちゃんみたいな純粋な人間が、これ以上傷つくのは見たくない」



え?純粋って?売春していたような男が? 警部も良いように手玉に取られてるんじゃ?


そんな風に思っていた所に、衝撃的な光景が目の前に現れた。




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