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こんな話をされた場合…オレは、第三者として、どうすれば…?
如月さんは、苦しそうな表情でうつむき加減だし、リュウは?
長い銀色の髪で壁を作って、表情を見せない。
「いや…でも……そんな事は…」
何て言ったらいいのか、わからねぇ!
「…ある日気づいたんです。 いつも、携帯のストラップを愛おしそうに触れている事。そして、ドレッサーの引き出しの中に」
そこまで話すと、リュウの目の前まで来てしゃがみ、顔を見つめ、
「貴方との写真を大事にしてることを」
「……っ!!」
リュウは、勢い良く立ち上がり出口に向かった。
「待って下さい!」
「…何かの間違いだ」
そう呟いて、扉のノブに手をかけた。
「貴方のお気持ちは、解りました! ただこれだけは聞いて下さい! 私は、一人の親として誓います。『愛』には、自分が選んだ相手と結婚させます。どんなに周りが反対したとしても、オレだけは、あの子の味方になってやります。ですから…私と父の犯した罪を許して下さい…!」
リュウは、ドアノブを握ったまま振り返る事無く答えた。
「…オレが望むのは、すみれと赤ん坊の幸せだけだ」
「勿論、幸せにします!」
それを聞くと、背中を向けたまま軽く頭を下げ部屋を出た。
翌日の明け方近く、すみれちゃんが亡くなったと、後からメガネさんが教えてくれた。
急性心不全だったそうだ。
リュウの想い。
如月さんの想い。
オレやメガネさんの想い。
そして、すみれちゃんの命をかけた想い。
沢山の人達の愛情を受けて産まれてきた愛ちゃん。
だから、そんな愛ちゃんを傷つけるようなヤツは絶対ぇ許さねぇ。
だが、オレは警察官だ。
どんなクズ野郎でも、正当な理由無しに手を出す訳にはいかねぇ。
つー訳で、大きな独り言を言ってみた。
「あれ?向こうからお巡りさんに繋がれて来るヤツ、あのエロ糞ジジィじゃね?」
オレが言うか言い終わらないかのうちに、隣を歩いていたカレは居なくなり、その代わりエロ糞ジジィが、目の前に倒れていた。
早っ!!
目の前で平気でチュー出来るチャラいだけの男だと思ってたけど。
へぇ、やるじゃん。
空手の達人つーのは、まんざら嘘でもねぇんだな。
しかも「足が長過ぎて悪ぃな」だってよ。回し蹴りしておいて。
おもしれぇ。
マネージャーっぽい人が、騒いでいるけど、せいぜい厳重注意だ。
オレは…注意だけじゃ済まねぇかな?
でもしょうがねぇじゃん。
愛ちゃんを愛してるのは、カレだけじゃない。
オレだって。
独身のオレが言うのも変だけど、息子みたいに思ってる。
何かある度にこんな事してたら、オレ…
はぁ…
オレ…結婚出来るかな?
episode zero Ai end
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