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オレは、幼い頃からずっと、困ってるヤツらを見ると放っておけない性分だった。


ついつい他人の困り事に首を突っ込んで、解決してやりたくなってしまう。


ホント、大きなお世話だよね。

でも、理屈じゃないから、しょうがない。


小学校の頃は、先生からの信頼は絶大だったけど、

高校生になると、容姿もあいまってか、

チャラい、いいかっこしぃ、八方美人、自分の意志が無い節操なし…なんて、言われ始めた。

まあ…いいけど。


「たまには、私を優先させてよ」なんて…マキに言われた事があったが、結局、別れちまったしな。


誰かひとりだけを優先させるなんて…オレには無理なのかも。



一生、彼女できねぇな。



柄にもなくしみったれてたら、携帯の着信が鳴った。 


画面上に “愛ちゃん” の文字が暗闇に浮かび上がる。


おっ!


オレは、今の暗くなりかけてた気持ちをリセットして、画面上で通話に切り替えた。


言っておくが、決して友達以上の感情は無い。



『あっ!北本君?オレ。愛です。あの…ダメ元で訊いてみるだけなんだけど…ぁ…ダメなら、ちゃんと言ってね。決して、無理強いするわけじゃ…』


「…わかったから。何?」


思わず笑って訊いてしまう。

そんなつもりは無くても、ついつい突っつきたくなるあの頬を思い出す。


あくまで衝動に駆られるだけ。実際手を出した事は無い。



『あのね……今日……空いてないかな?……と、思って…』



ん?……ああ、そっか…そういう事か。


今日は、クリスマスイブだ。相手の予定を訊くのに気を遣う日。ましてや当日。


電話の向こうの愛ちゃんの表情を想像し、またも笑いがこみ上げてくる。


紫津木は、確か海外からまだ帰って無いはず。

オレは、代打ってところかな…?


直ぐにOKするのは癪なので、ちょっと意地悪した。



「……今日か……どんな用件?」


『用…ていう程じゃないんだけど……ぁ…もしかして、今誰かと一緒?!』  

 


今頃気がついて、ごめんなさいって思ったのか、物凄く焦った声を出してる。


んな訳無いじゃん。寂しいクリスマスイブですよ。

愛ちゃんが電話をくれるまではね。


言っとくけど、オレ、チャラくないから。



「いや…ひとり寂しく過ごしてたよ」



意地悪していいのは、オレだけだからな。

そんなアイツの言葉が、聞こえたような気がした。


「だから、空いてるよ」


続きが話しやすくなるように、極力穏やかな声で返答すると、


『本当?! 実は、料理いっぱい作り過ぎちゃって…今から来てくれるかな?』



どこか遠慮がちに訊いてくる愛ちゃんの事を素直に可愛いと思った。



「いいよ」


『ありがとう! それじゃ、お友達も連れてきてね』




……………えっ?



『……北本君?』



「……わ…わかった。連れてく」



あれ?


何でがっかりしてんの?


当然だろ?紫津木がいねぇのに、2人っきりで会うわけないじゃん。

愛ちゃんは、そんな事しない。



だから!それ以上の感情はねぇから!



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