友達という境界線(戦車の逆位置)

 都合のいい時だけの関係よりも、深く長い関係の方を重要視したいと思うのは、自然なことではないだろうか。



「ね~主~? 聞きたいことがあるんだけど~聞いてもいい~?」

「もちろんよ、何が聞きたいの?」


 相変わらずのふわふわとした態度で浮遊しながらやってきた彼は、私からの回答にふにゃっとした笑顔を向けた。彼を見ていると不思議と力が抜けて、のんびりとした気持ちになるから何時も不思議である。


「主ってさ~友達とかいるの~?」

「いないよ」

「え~そうなの~?」

「うん、友達はいない。親友とか、大事な人ならいるけどね」


 友達という言葉は、いい意味でも悪い意味でも解釈できる。さらに言えば、人によって捉え方が異なるため、個人的には避けている言葉でもある。


「友達は私にとって境界線、それ以上なら親友や大事な人になるし、それ以下ならあまり深くは関わらない人になる。そんな感じで決めているから、友達っていうポジションの人はいないかな……」

「でもさ~その人にとって主が友達ってこともあるでしょ~? そういう時はどうするの~?」

「それはその人の捉え方だから、私は何も思わないよ。その人のことを私が友達以上だと思っているなら大事にするし、友達以下だと思っているならそこまで干渉しない」

「じゃあさ~僕はどこにいるの~?」

「貴方も含めて、カードさんたちは私の第二の家族だと思っているから、当然友達以上の大事な人だよ」


 つくづく変わった考え方だなとは思っているが、これが私でもあると最近では受け入れることにしている。実際余計な関係を持たないようにしたことで、巻き込まれたりすることも少なくなったし、関係性の整理にも繋がった。変に気を回したり、顔色をうかがうようなこともしなくてよくなり、少しばかり肩の荷が下りた。

 正直言って、この方法は人にはお勧めできない。何故なら孤独になりやすくなるからだ。一人が好きという人になら、性に合うかもしれないが、それ以外の人には不向きだろう。場合によっては相手に不快感を与えてしまうきっかけにもなる恐れもある。

 ただ、自分の経験から察するに、友達以上の人との繋がりはとても深いものになり、簡単には壊れない関係性になると思う。実際幼い頃から現在に至るまで続いている人は全員友達以上として認識している人であり、友達以下の人に関しては何の連絡も取っていない。当時は離れても仲良くしようなんて言われていたが、やはり友達以下の関係であった。


「良かった~僕は主にとって大事な人なんだね~」

「当然じゃない、貴方たちには感謝してもしきれない恩もある。生涯を通して大事にしたいって思っているわ」

「誰かの特定の人になるのってさ~しんどいことだもんね~」

「そうね、気疲れしちゃったりもするし……自分らしさを受け入れてくれる人ほど、大事にした方がいいなって思うわ。私の素性とか気持ちを理解したうえで、関わりを持とうとしてくれたり、大事にしようとしてくれる人は、私も同じように接したい。そう思えるなら、友達以上の関係だと思うから」

「人数よりも~絆の強さを重視したいもんね~」


 ふわふわと浮遊しながら、彼はそう言ってまたふにゃっとした笑顔を向けるのであった。

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