(二)-4

「昨日のあんたか」

 細身の男が言った。昨日の事件の直前に豊永たち三人は顔合わせした。目出し帽を被る前で、素顔を互いにさらし合った。それでこの男は豊永のことを覚えていたらしい。もちろんこの男は、この部屋の住人ではない。

 豊永は当初、自分とこの部屋の住人である佐川善吉の二人で実行する予定であった。それが急遽一人加わった。

 素性の知らない人間を加えることはトラブルの可能性があったが、社長の指示によるものだったので、受け入れたのだった。


(続く)

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