(二)-3

 豊永はゆっくりと玄関に侵入した。そして一言「佐川」と部屋の奥に声を投げた。

 玄関のすぐ脇にはキッチンがあった。ダイニングの奥には片方のみに寄せられたふすま戸があり、残る半分の隙間から六畳の和室が見えた。

 キッチンに人はいなかった。

 豊永が「佐川、いるか。俺だ」と、ゆっくりと部屋に踏み込んだ。

 するとふすまの陰から男性が現れた。昨日の現金輸送車襲撃の際に一緒にいた男だった。身長は一七〇センチくらいで、細身で目も細くつり目で、しかも頰がこけており、最初に会ったとき、嘘つき、詐欺師みたいな印象を持った。


(続く)

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