第3話「三曲」
学園の廊下を歩きながら、様々な教室を見て回る。
どこもかしこも綺麗な造りで、政府の施設というのも納得がいく清潔感だ。
「学級の教室は何個あるんだ?」
「何個だっけ……?」
……信じられないほど当てにできない案内人と共に歩いて回ってるのが、果たして有益かは謎だ。
歩いているうちに理科室やら図書室やらは見つけられたから、全くの無意味ではないが。
そうして歩いていき、俺達は学校の中庭に出た。
巨大な公園のようなそこは、中庭というにはあまりに広い。
遊具も豊富で、下級生らしき子どもたちが、そこで何人か遊んでいるのが伺えた。
「つかれた……休憩……」
「お前どんだけ面倒臭がりなんだ……」
ベンチにへたり込んだヒズミは、最早動く気はないといった様子だ。
まるで、気の抜けたバルーン。
俺との会話も、常に要領を得ないような状態だ。
「お前……誰に対してもそんななのか?」
そんな彼女に、思わず突っ込んだ物言いをしてしまう。
「……まぁ」
「クラスでもそうなのか?その、友達とか」
「友達いない……部屋にいるし……」
やはりそうなのか……。
予想はしていたが、この調子だとクラスでも孤立しているようだ。
……どうして、他人と真摯に向き合おうとしないのか。
そう、素直な疑問が首をもたげる。
そしてつい。
「これは忠告だが……ちゃんと他人と向き合ったほうがいいぞ、でないと孤立するばかりだ」
直球で、言ってしまう。
それに対し。
「……なにか、わるい?自分だけ良ければ、ワタシはいいの」
ヒズミが……初めて、感情を顕にする。
それは、怒りか。
俺に向けて、今まで一切表さなかった怒りを突きつけている。
だが、気圧されるつもりはない。
「悪いに決まってる。真っ直ぐに人と向き合って話すことは、人間の最低要項だ。俺は、自分勝手に他人に迷惑をかける人間はきらいだ」
ハッキリと、告げる。
「……」
それを聞いて。
ヒズミは、返事もしなくなった。
うずくまったまま、微動だにしない。
「な、なんだ……不貞腐れないでくれよ、学校の案内は」
「……」
「……わかった、一人で回ってくる。連れ出して悪かったな」
俺はそう言い残し、彼女の元を後にする。
あの様子、もう口を聞いてはくれないかもしれない。
……だがあの態度は、「誰にも興味がない」と自分でアピールしているようなスタンスは、俺とは相容れない。
自分さえ良ければいい、なんて勝手だ。
その結果他人に迷惑をかけて恨みでも買ったら、元も子もないだろうに。
俺はそんなことを思いながら、暫く学校を一人で歩いて回る。
異能の力の衝突にも耐えうる体育館や、見たことのない機器で埋め尽くされた部屋。
普通の学校にないものを数多く目にして、俺は改めておかしな所にきたのだと実感する。
そうして一通りの見学を終え、どうするかと考えたとき。
――――突然、
<<拘束されていた学生が地下区画から脱走しました!>>
<<付近の学生は、急ぎ退避を――>>
保護されていた学生が、脱走。
俺の中で真っ先に浮かんだのは、つい昨日の出来事だ。
俺が攫われたあの時に、側にいた能力者。
炎を操る異能をもつ不良……!
「退避って、どこに……」
こういう非常時に、避難先も分からないというのが一番困る。
こんなとき、側にヒズミがいてくれれば。
そう思ったとき。
「ヒズミ……ちゃんと、逃げてるか……?」
不安が
彼女は疲れて、しかも俺の言葉で酷く傷つけてしまった様子だった。
そんな状態の彼女が、警報に従って律儀に避難などするか。
……まずい。
「行かなければ……!」
俺は真っ直ぐに、中庭へと走る。
釜の飯を共にしたルームメイトと、一日で永遠の別れだなんて流石に寝覚めが悪い。
助けに、行こう。
俺は全力で、廊下を走った。
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