第11話 アザ熊

「参りました!」


アザム団長は身体がデッカイ。

単に背が高いんじゃない。

肩幅は広く胸板は厚い、鍛えてるのが誰でも分かる。

その身体でドカンと対戦相手を殴りつけた。


相手はウチの道場の人間。

そこそこ出来るハズの男で、キチンとガードもしてたのに。

試合会場のハジまでぶっ飛ばされた。

戦意喪失しちゃったのね。

アッサリ負けを宣言した。


「すっごいね。

 さすがアザム団長」

「………………」


エステルは無邪気に喜んでるけど。

アタシはそうもいかない。

だって勝ち進んだら、アレといずれ戦うのよ。

うわー、どうすりゃいいんだ。


いや、ステュティラ。

戦う前から弱気になんな。

何がなんでもアザム熊のすけだってぶっとばぁす!

世界で一番、アタシは強い。

サイキョーの美少女剣士、それがステュティラ様。

そう唱えるんだ。


「ステュティラちゃん。

 なんだか瞳がメラメラしてるよ」


「燃えてんのよ。

 よーし、団長にだって負っけない。

 アタシが団長に勝ったなら、明日から護衛団の団長はアタシね」

「ええっ?!

 そんなルール無いよっ!

 これはタダの武術大会で団長争奪戦じゃ無いんだよ」


「うっさい、エステル。

 アタシが燃えてんのに水かけんな」

「燃えすぎてるから水掛けておさめてあげてるんだよ」


観客たちがなんだか騒いでる。


「これどっちも勝ち進んだら、アザム団長とナシール副団長の戦いが見られるんじゃないか」


「すげえ!

 どっちが強いんかな」

「そりゃ、団長だろ。

 団長と副団長なんだぜ」


「ナシール様があんなクマに負ける訳無いでしょ」

「そうよ。

 ウワサではアザムさんは高貴な血筋だって言うわ。

 だからナシール様が立てて、団長にしてあげたの」

「実力ではナシール様に決まってるわ」



アザ熊とナッシーの戦い?!

そっか、ちょっと気になるわね。


待って、待って。

勝者と勝者が勝ち残った場合のハナシで。

ナッシーが第4試合の勝者。

アザ熊が第7試合の勝者。

アタシは第1試合の勝者だから……アザ熊より先にナッシーと対戦する。

だから、その場合アタシが負けるってコトじゃない。

フザケんじゃないわよ。

例え、相手がナッシーでも。

この最強無敵美少女剣士ステュティラちゃんが負けるもんですか!


「…………ステュティラちゃん。

 そのつぶやいてるアザ熊って……もしかして……」

「アザ熊、熊みたいなアザム団長のコトよ」


「やっぱりそっか。

 ……偉い人にテキトーなあだ名付けるの止めた方がいいよ……」


エステルが何か言ってるけど知らない。

アザ熊はアザ熊なの。


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