第87話 次期皇帝

「まさかその次期皇帝になるかもしれない男とファオランお嬢様を結婚させようと……

 未来の皇后にファオラン様をとお考えなのですか」

「さすがにそこまでは考えちゃいない」


シンイーさんとジュアンさんは話してる。

ファオランさんのお義母さんとお父さん。

他の人には聞こえにゃいくらいの小声。

だけど、わたしの猫のおミミには聞こえちゃうのよ。


「わたしが幾らチィニャで五本の指に入る商人と言えど。

 他国の娘を正妃にするのはムリがあるだろう。

 妾が精々だ。

 それでもこの広大なペルーニャだぞ。

 充分すぎる。

 ……しかしペルーニャは他国の人間を王族に迎え入れるのは寛大であったな。

 しかも商人の社会的地位も高い。

 まさか、あり得るのか」

「……旦那様!

 それは……ファオラン様が政略結婚に利用されると言う事を……

 簡単に受け入れるとは思えません」


ホントウにゃのかしら。

護衛団の団長、アザムさんがペルーニャの前王の血筋。

ジュアンさんの読みが当たってればそう言う事ににゃる。

あのクマみたいな男性が?

王子とか、皇太子だったの?

ん-ーー、でも意外とあの人威厳があるのよね。

ニコニコして人がいい雰囲気だけでもにゃい。

護衛団の戦士たちに信頼されてる。

ナシールさんもトーヤー隊長もアザムさん相手に毒舌を吐いたりするけど、嫌ってるんじゃにゃい。

むしろ信頼してるのが伝わって来る。

人に愛されるカリスマ性みたいにゃモノが有るんだわ。



「そうだ。

 わたしが上から言っても、絶対受け入れないだろう。

 お前からウマク言ってやってくれ」

「……ハァ……」

「それにあの娘もマンザラでないようなコトを言っていたではないか」

「アレは……会話の流れでしょう。

 ホンキでお嬢様がそのアザム様を気になってるとは思えません」


確かにファオランさん。

ナシールさんはイケメンだけど観賞用。

アザム団長の方が付き合うなら良い。

にゃんてセリフを口に出してたけど、あれはステュティラちゃんとのガールズトーク。


「フム。

 若い娘の心まで私が知るモノか。

 しかし、嫌ってはいないのだろう。

 ならば、お前が焚き付けろ。

 相手は取引先の団長、親しくなって取り入れ、とお前が吹き込むんだ。

 あの娘はイロコイには少し弱いようだが。

 商人としての向上心は強い。

 そんな風にお前から焚き付ければ、やる気になるだろう」

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