第79話 黒猫ドノ

「……黒猫……

 いや黒猫ドノ……おまえやはり男爵ではないか。

 黒猫男爵。

 あなたは一体……」


イルファンさんがわたしを見て呆然としている。

目を見開いて、見ている物が信じられにゃい、と言わんばかりの表情。


護衛の男の人は顔色が良くなっている。

呼吸もさっきまでは絶え絶えだったんだけど、大きく安定している。

見ただけで、もう大丈夫にゃのが感じられる。


良かったわー。

わたしはポンポンと左のにくきゅうで男のおなかを叩く。

もちろんダメージを受ける程強く打っていにゃいわよ。


わたしの方は疲れてるの。

黒猫の体からにゃにかがにゃがれ出した。

特に運動したワケじゃにゃいんだけど。

わたしはグッタリ疲れ切ってるの。


「黒猫男爵。

 自分で気付いているのか?

 先ほどまで、貴方は光り輝いていたぞ。

 あたりの暗闇を照らす光る猫だった。

 まさか……貴方は神の遣い……なのか」



「神ですか……

 フッハハハハッハハハハ。

 神は神でも暗黒神。

 邪神でしょうね」


誰が言ったの?

護衛の戦士や兵士は意識をうしにゃっていて。

暗殺族セムはノックダウン。

イルファンさんにいきにゃり誰かはにゃしかけてきたの。


「アズダハーグ皇子?!

 意識が有ったのか?」


そうよ、声を出したのは少年皇子だった。

苦悶の声を上げた後は、ずっとにゃんの反応もにゃくて気絶でもしちゃったのかしら、と思っていたけど。

いつの間にか目を覚ましていたのね。


「皇子、ケガは無いか?」

「もともとケガ等してはいませんよ」


「……しかし意識を失くしていたように見えたが……」


イルファンさんは少し戸惑った風情ね。

わたしもよ。

アズダハーグ少年、前までと少し雰囲気が違わにゃい?

前髪をおかっぱ風に切り揃え、気の弱い印象を与える線の細い少年。

そんにゃ風に見えていたのよ。

現在の彼は髪型は変わらにゃいけど、その下から目線がギラギラしている。

気が強そうと言うか、粗暴にゃフンイキさえ感じさせるわ。


「眠っていたんですよ。

 ずっと……ずっと長き年月」


少年はわたしに目線をにゃげにゃがら言う。


「その猫が……

 その猫が首に着けているでしょう。

 『ネルガルの瞳』です。

 その邪神の波動と、その猫から迸った力が私を目覚めさせたのだです。

 アズダハーグですって……

 私はそんな名ではありません」


少年の肩からはにゃにかが立ち上がり蠢く。

蛇に似たにゃがいとぐろを巻く存在。


「我が名はアジ・ダハーカ。

 太古に封印されし龍です!」

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