第63話 リリーちゃんから聞いたおはにゃし

これは後でリリーちゃんたちから聞いたおはにゃし その1


その頃、リリーちゃんと虎タルさんはわたしを追ってテントを出たそうよ。


「みゃーのアネさん、どこ行くんみゃ。

 アッシもお供しますみゃ」

「虎タル~

 せっかくだから二人で夜のみゃちを散歩しましょうよ~」


ファオランさん風に言うと。

虎タルさんは気は優しくて力持ち。

ついでに街のボス猫だから権力も有るのかしら。

リリーちゃん、ステュティラちゃんより男を見る目があるのかも。


そんな風にふたりはわたしの跡を追ったみたい。

わたしは観光気分で辺りを観察してたから全く気づいてにゃかった。


そしてリリーちゃんたちは橋に近づく。


「アンタ酔い過ぎよ。

 酒は止めるって言ったでしょ」

「夜は許してくれると言ったじゃないか。

 明日の朝はホントウに飲まない。

 誓うから」


少しイロっぽい格好の女の人と穴の空いたシルクハットをかぶる男の人。


「それにしても……

 河で何か動いてるの、ホントに見えたんだけどな」

「ユーレイか。

 それとも闇に隠れるって言う暗殺族セムだったりしてな」


「よしてよ!」

「ほら、そこに暗殺族セムがいるぞ〜」


シルクハットの男はお姉さんを脅して楽しんでる風情。


「ほーらほら、そこ!」


なんて街外れの暗がりを指差すの。


その途端。

暗闇からにゃにかが蠢き出す。

黒いマントをすっぽり被った人影。


虎タルさんは驚いたらしいわ。


夜目の効く猫のオイラがマッタク気付いてにゃかった。

ニャニモノだ?! コイツら。


リリーちゃんは怯えて虎タルさんの後ろに隠れる。



「なんだなんだなんだーー!!」


ほらそこ、なんて指差していた男の人は慌ててる。

にゃんせ冗談で指差してた暗闇がホントに動き出したのよ。


シルクハットの男の手に隠していたナイフが現れるの。

ナイフにゃげの男の商売道具。

おそらくは刃を殺した殺傷能力の低い刃物。

にゃんだけど、凶器の煌めきを目にした黒いマントから鬼気が溢れる。

瞬間、黒いモノが伸びてナイフ使いの手から凶器が叩き落される。


その黒い影から押し殺した声が漏れるの。


「男、良く気が付いたな。

 我らが暗殺族セムだと」

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