第62話 夜の河

わたし少し表に出てようかしら。

テントのにゃかはライールさんとジュアンさんのせいでお酒のニオイが充満してるの。

黒猫のわたし、ニオイには敏感にゃのよ。

こんにゃトコに居たらわたしまで酔っ払っちゃう。


エラティー隊長は寝入っていて。

ライールさんたちはまだお酒飲んでるの。

エステルちゃんは呆れながら見てるわ。

ステュティラちゃんは瞼がくっついたりはにゃれたり。

コックリしかけてるわね。


わたしはテントを抜け出て広場を散歩する。

もうとっくに夜ににゃっていて、賑やかだった市場には人がいにゃい。

所々に松明が燃やされていて見張りらしい人物が立ってるだけね。


わたしは街の入り口、大きにゃ橋の方へと歩いていくわ。

黒猫ですもの。

闇に溶け込んで見張りの人にも気づかれにゃいのよ。


市場を出て街の大通りを見るとまだ明るい。

昼間よりは少ないけど人通りもあるわ。

夜でも営業してるレストランや、飲み屋さんがあるのね。


わたしは石橋の方へ。

街の入り口だと言う装飾の施された門はもう閉まっている。

ここにも見張りの兵隊がいるけれど。

わたしはその目をかい潜って、橋から河へと降りていく。


大きにゃ岩橋、アッラーヴェルディーハーン。

ライールさんによるとダムのようにゃ役目も果たしているの。

ザーヤンテの水を堰き止めている。


わたしたちが街に辿り着いた船着き場の方は水位が高い。

逆側、下流へとにゃがれて行く方はもっと水位が低いのね。

わたしは行った事の無い下流の方へ降りていくわ。


河原は岩場のようににゃっていて、人の姿はにゃい。

黒い川面にエスファハーンの街の灯りが映る。

暗い水の中揺れる、幾つもの灯り。

少し怖くもあるのだけど、にゃかにゃかステキにゃ光景だわ。


「何か今動いた気がするわ」

「魚でも跳ねたんだろ」


そんにゃ声が街の方から聞こえるの。

河のそばにいるわたしは小さにゃ黒猫。

よほど目の良い人じゃにゃいと気づかれにゃいわ。


「誰か知らにゃいで入っちゃったのかも」

「貼り紙があるからフツー気付くだろ。

 『危険! 入るな』って」


ここって、そんにゃキケンにゃ場所にゃの?

わたしは少し怖くにゃって辺りを見廻す。

静かにゃ水のにゃがれ。

暗いだけでにゃにもアブナイ事はにゃさそう。


「水が貯まると水門が自動的に開くからな。

 そうしたらスゴイ勢いで水が流れ出る。

 この辺の人間なら、子供でも知ってるぜ」


そういうコトにゃのね。

この大きにゃ橋は河の水を堰き止めている。

水位が上がり過ぎると水を下流ににゃがすんだわ。

大量の水の力というのはトンデモにゃい。

地形まで変えてしまう自然のエネルギー。

巻き込まれたらタイヘンね。


わたしは街を離れる方向へ河を下っていく。

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