第60話 酔っぱらい

「エラティくんもどうだい?」


ライールさんがお酒の入った杯を差し出すけれど。

浅黒い肌の美少年は首を横に振る。


「僕は……甘い物の方が好物なんで。

 こっちをいただいてます」


シーリニィをエラティさんはパクついてる。

クッキーみたいなものね。

上にジャムが乗ってたり、ココナッツが乗ってたりいろんな種類があるみたい。


「なんだと〜。

 甘い物だと、カワイイじゃないか。

 そのカワイイ雰囲気でウチの娘をタブラカシたんだな〜」


ライールさんはすっかり赤ら顔。

ただの酔っぱらいね。


「ちょっと父さん!

 何言ってるの?!」


「そういやエステル。

 エラちーがタイプだって言ってたわね」

「言ってない!

 言ってない言ってないーー!!」


ステュティラちゃんまで酔っちゃってる。

言って良いコトと悪いコトの区別が付いてにゃい。

もっともこの娘は酔ってにゃくてもそうかもしれにゃいわ。



結局エラティーさんは強引にビーラを飲まされてるわ。


「ううー、苦いな」


日本のビールとあまり変わらにゃい琥珀色の飲料。

わたしはあまりビールを好きじゃにゃいから良く分からにゃいんだけど。

比較的さっぱりした飲み物として親しまれているみたいよ。


「そうですか、エラティー殿は自由交易都市ホルムスの護衛団の隊長ですか。

 それはまた、お若いのにご立派ですな」

「……こんなビーラを飲んだだけで涙目になってるヤツがホントに隊長なのか」


ジュアンさんはさらにエラティーさんのコップに注ぎこんでるし、ライールさんは小声でブツブツ言ってる。


飲みゅにけーしょんと言ったら、最近の若い人には敬遠されてると聞くわよ。

わたしの若い頃は上司にお酒を勧められたら、断れにゃかったけど。

それで通りに酔っぱらった若い人が転がってたりして。

アレってばあまり良い光景じゃにゃかったわよね。


ジュアンさんやライールさんも適当にしてあげて。


わたしははにゃれた処から、みゃみゃーんと鳴き声をあげる。


「アレ、みゃーちゃん。

 どうしたの……」


エラティーさんが立ち上がるの。

別にどうもしてにゃいんだけど。

あにゃたが酔っぱらいに囲まれた場所から逃げやすいようにしてみただけよ。


「みゃーちゃん」


にゃんて言って、エラティさんはわたしを抱き上げたけど。

そのまま座って、規則正しい息を立て始める。

寝ちゃったみたい。

ホントにお酒ににゃれてにゃかったのね。



「……そうだ、父サン。

 私、護衛団の人に世話になって、それで武器を少しホルムスの護衛団に卸してあげられないカナ。

 護衛団の副団長に言われたノヨ。

 槍が欲しいんダッテ」


「……ほうホルムスのか。

 ふむ、武器は重いし嵩張るからな。

 あまり量は無いのだが少しなら」


ジュアンさんにファオランさんは言ってるわ。


「別にタダであげろ、って言ってるんじゃナイネ。

 問屋価格で卸してあげればいーの。

 ナシールさんもタダで寄越せとは言わなかったネ」


にゃんだかファオランさんの目が輝いて、お金の計算してる商人らしい顔ににゃってるわ。

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