その4 夜の河

第59話 馬乳酒

「さすが船乗りシンドバット、お強いですな。

 こちらの老酒ラオチューもどうぞ」

「ジュアンさんこそ。

 現地の酒は試しましたか。

 わたし、蒸留酒ラクを持ってるんです。

 一口いかがですか」


「おおっ、それは是非。

 …………なんとこれは刺激の強い酒ですな」

「葡萄酒をさらに蒸留して造るんだそうで。

 こいつはさすがにガブ飲みしちゃやばいですよ」


「わははははは」

「あはははっは」


男たちの酒盛りよ。


わたしたちはファオランさんの商隊のテントで夕食をご馳走ににゃってるの。

ライールさんとファオランさんのお父さんはお酒を飲んで盛り上がってる。

シンイーさんは少し前まで、カップに注いだりしていたのだけど。


「旦那様、そろそろお止めになった方が……」

「今日はお客様へのもてなしだ。

 シンイーもっと持ってきなさい」


ジュアンさんはすっかり出来上がってる。

ライールさんとビーラを飲んでいたのが、だんだん強いお酒に移行してるの。

シンイーさんも現在は呆れて、放っておいてるみたい。


エステルちゃん、ステュティラちゃん、ファオランさんは夕食ね。


包子パオズうまっ!!」

「本当、くせになる美味しさだね」


ステュティラちゃんがかぶりついてるのは肉まんね。

中華まん美味しいわよね。


「これ、交易都市ホルムスでも売ってよ。

 アタシたまに買うわよ」

「そうだね、これなら屋台でも売れそうだよ」


「このドゥーグもやたら美味しいわ」


ステュティラちゃんは白い飲料を飲み干す。

ドゥーグってのは確か飲むヨーグルトみたいにゃものだった筈。

そのままだとドロっとしていて、お料理のソースに使ったりもするの。

飲むときはお水で割るのよ。


「……これドゥーグにしてはちょっと……

 あまり飲み過ぎない方が良いよ、ステュティラちゃん」


なんだかエステルちゃん少し顔が赤らんでにゃいかしら。

大丈夫?

船旅で疲れたのかしらね。


ファオランさんが驚きの声をあげる。


「それ、子供がガブ飲みしちゃダメよ。

 ミャンゴールの馬乳酒アイラグだわよ」

「お酒なんですか?!」


「アルコール度数は低いから、少し飲むくらいなら良いけど……

 ガブ飲みしちゃったら……」


「……なんか身体が熱くなってきた~」


ステュティラちゃんは顔が真っ赤、目がトローンとしてる。

と、思うと服を脱ぎだす。


「暑いっ!

 アタシ脱ぐわよ」


ダメよ。

ここにはエステルちゃん、ファオランさんだけじゃない。

ライールさん、ジュアンさんも居る。

それだけじゃにゃくてエラティー隊長だっているのよ!


「ダメだよ、ステュティラちゃん!」

「ダメネ。

 そーゆーのはお代を取ってからヨ!」


……ファオランさん、料金を取ったらもっとダメよ。

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