第49話 ナイフ

フギャニャニャニャ!!


わたしはお怒りモード。

細くて黒い尻尾を膨らませて、飛び出そうとする。

あの酔っぱらいの顔をツメで引っかいて、酔いを醒まさせてやるわ!

と、思うんだけど、エラティさんが行かしてくれにゃい。


「ダメだよ、みゃーちゃん。

 ここは人が多い。

 こんなトコではぐれたら、本当にもう逢えないよ」


「そうよ、みゃー。

 なに興奮してるの?」


エステルちゃんまで。

ダメだわ。

この二人はナイフ投げの男が酔っぱらってるにゃんて、想像もしてにゃい。

そりゃそうよね。

わたしだって、そんにゃトンデモニャイ事態考えてにゃかった。


男がまたナイフを構えるわ。

手を上にかざして、観客に見せるように刃物を見せびらかす。

陽の光を浴びて煌めく凶器にゃの。


シルクハット男がナイフを上に持つ姿勢から投げ出そうとしている!


いやーん。

止めて、やめて。

仕方がにゃい。

エステルちゃんやエラティさんを強引にでも振り払ってでも……

そう思うわたしを置いて、飛び出して行く人がいるの。



ナイフが男の手をはにゃれて、飛んで行く。


一瞬でナイフ男の顔がサッと蒼褪める。

自分でにゃげたんだもの、分かるんでしょう。

あのコース、マズイ!

ナイフにゃんてにゃげた経験のにゃいわたしだってわかる。

アレは刺さってしまう!

それも体のドまんにゃかに。


空中を舞う刃物。

凶悪な光を放つの。


その瞬間。

板に縛られた女性の前で、刃物が蹴り上げられて。


キックのポーズを取ってるのは、赤いチャイニャドレスを纏った少女。


ファオランさんがナイフを蹴り飛ばしていた。



「キミ!

 何をするんだ!

 営業妨害だぞ」


呼び込みをしていた道化師がファオランさんを指さす。


「何をですって?!

 ジョーダンじゃないヨ。

 ワタシはむしろアナタたちのサーカスが営業停止になるのを守ってアゲタネ。

 感謝して欲しいくらいヨ」


道化師の男は訳が分からず、怒ってるけど。

シルクハットのナイフ使いは下を向く。

自分のにゃげた刃物が狙ったコースに飛ばにゃかったのは本人が一番分かってるのね。


縛られてたお姉さんはにゃみだをにゃがしにゃがら笑ってる。

泣き笑いってヤツにゃのね。


「怖かった、コワカッタ、こわかったーー!!

 ありがと、アリガト、有難うーーー!!!」


「どういたしましてネ」


ファオランさんはにゃいてるお姉さんに向かって笑いかけた。

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