第44話 ライールさんと虎タルさん

「エラティくんが戦闘で頼りになるのは分かったし、そこに文句は無いんだが……

 しかし、彼もエスファハーンは初めてなんだろう」


「いえ、子供の頃ですけど来た事有りますよ。

 ファオランさんの商隊は大きいんですよね。

 なら街外れの市場の方へ行こう。

 あそこには他所から来た馬車を受け入れるような場所が有った筈だよ」


「さっすがー、隊長。

 頼りになるネ」


「………………」


「んじゃ、とっとと行きましょ」


「そうだね、ステュティラちゃん」


歩き出す少女たち。

ライールさんはポツンと取り残されてるの。



「……待ってくれ、俺だけ一人で行動なのか!

 淋しいじゃないかー」


「何言ってるの、父さんは一人なんかじゃないよ」


エステルちゃんが言うわ。

ライールさんは顔中に喜びを浮かべてる。


「おおっ、一緒に来てくれるのか。

 エステル、父さんは嬉しいぞ……」


エステルちゃんに抱き着こうとするライールさん。

その手にハイっと渡されるわ。


にゃにが?って言うと。


「ライールさん、お願いネ」


「また迷子になっちゃったら大変だもの」


「オジサン、ちゃんと見ておいてよ」


リリーちゃんと虎タルさんよ。



「え……えええ……えっ?」


猫を両手に渡されて、まごつくライールさんを置いて、みんな去っていくの。


わたし?

わたしはササッとエラティ隊長の肩に乗っているわ。


「あらっ、みゃー。

 みゃーも父さんと行った方が良くない?

 迷子になっちゃたら……」


「みゃーちゃんなら大丈夫だよ。

 僕が見ておくし、この子は賢いもの。

 迷子になんてならないよ」


「……男爵、割と図々しいネ。

 隊長の肩に乗ッテル。

 ハンサム選らんデルヨ」


ファオランさん、ヘンにゃ事言わにゃいで。

別に美少年だから、肩に乗ってるんじゃにゃいの。

エラティさんが場所を知ってるらしいんですもの。

それに着いてくのはトーゼンでしょ。


わたしたちは賑やかに歩いて行くわ。



「……エステル、ホントに父さんを置いてっちゃうの。

 あれ、久々に娘との旅行だと思ったのに……

 とほほほーい」


淋し気に肩を落とすライールさん。

その肩にポンと虎タルさんがにくきゅうを置くわ。


そう気を落とすにゃよ。

女にゃんてあんにゃもんさ。


そう言わんばかりね。

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