第43話 ラッキー

 エスファハーンへの門番の兵士達は言うの。


「アンタ達、このタイミングで来るなんてラッキーだぜ。

正に神の助けペ・オミーデ・ホダーだな」


「エウロペの人か。

 昨日まで外国人が入ろうなんてしたら、厳重に調べなきゃいけないトコだったんだぜ。

 今日からは。

 入都市税さえ貰えばなんでもいーさ。

 チャイニャ人だろーが、ミャンゴールだろうが大歓迎だ」


「そうなのか。

 御機嫌じゃないか。

 昨日まではなにが有ったんだ」



「分かってるくせに、訊くんじゃねえよ」


「ザッハーク皇帝と御付きの軍隊が出て行ったんだよ」


「……ザッハーク?!

 皇帝はとっくに冬の宮へ移動してる時期じゃ無かったのか」


門番さんと言葉を交わしてたライールさんは驚いてるわ。



「例年ならとっくに移動してる時期なんだが……

 今年は変なウワサがあってな」


「変なウワサ?」


「ああ……皇帝の暗殺を企んでる連中が居るってな。

 そんな話が流れてるもんで、皇帝の軍がスゲェピリピリしてたんだよ」


「皇帝の暗殺?!」


「シッ!

 大声で言うんじゃねえよ」

 

皇帝暗殺?

ブッソウにゃ話ね。

でもわたしたちにはあまり関係にゃいわ。


昨日までは街は厳戒態勢。

外国人なんか来ようモノなら、すぐに皇帝直属の兵士が飛んで来たと言うの。

それが皇帝やその護衛の軍隊が出て行った。


だから門番の人たちは浮かれている。

街もあまり大っぴらには出来ないけれど、お祭り状態らしいわ。

皇帝直属の兵士が多数通りを巡回して、厳しいムードだったんですって。

そこから解放されたんですもの。



「んーーー。

 まずは宿を探そうか。

 夜になってから探すんじゃなかなか見つからないもんさ」


「ライールさん、迷惑かけるネ。

 でもウチの商隊見つけたら、泊る場所くらい世話してもらえると思うヨ」


「ファオランさん、エスファハーンは広い。

 商人や商隊なんかたくさんいるんだ。

 すぐ見つかると思わない方が良い」


「なら、父さんは宿を探して。

 わたしたちはファオランさんの商隊を探すわ」


「おいエステル、女の子だけじゃ危険だ」


「大丈夫よ。

 エラティさんが付いてるもの」


「……えっ?……」


「父さんも助けられたでしょ。

 エラティさん、護衛団の隊長だけあってスゴク頼もしいの。

 心配は要らないわ」


「……そ、そうか……」


そう答えるライールさん。

顔が少し引きつってるわよ。

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