第30話 サソリ

「やぁぁああああああああああ!!!」


エステルちゃんは舵を握りながら悲鳴を上げてる。

その正面にはデカイ虫みたいにゃの。

黒光りする胴体、細長い肢で甲板デッキのヘリから姿を現す。

背中の方からにゃがい尾が伸びる。


パピルザク、サソリの魔物ダェーヴァ


尾の先端、尖った部分がエステルちゃんへ近付いてくるの。

エステルちゃんは舵を握るために逃げられずにいる。



「エイッ!」


気合と共に刃が振られて。

エステルちゃんへ近づいていた凶器が斬り落とされる。


斬り落としたのはステュティラちゃん。

彼女はジャンプして曲刀シャムシールに体重を乗せて、パピルザクの尾を斬り落とした。


「父さんにシゴかれてきたアタシの剣技。

 ナメんじゃないわよ」


エステルちゃんの脇にスックと立つ少女。


キシャァシャシャシャァ!


尾を斬り落とされた魔物ダェーヴァは怯んだのか。

甲板の先へ消えて行った。



「へーっ、ヤルじゃない」


言ってるのはエラティさんね。


「あの娘……確かターヒルさんの娘さんだっけ。

 小さい頃から剣を叩きこまれて来たのかな」


ターヒルさん。

確か、ステュティラちゃんのお父さんで武術道場の先生ね。

ステュティラちゃんは道場で、こどもの頃から大人に混じって剣の練習をしてきたと言っていた。

イロイロ困ったトコロもあるおんにゃの子だけど、剣の腕だけは確かね。



ライールさんは慌てて、エステルちゃんの元へ。


「大丈夫か、エステル。

 刺されたりしてないか?」


「大丈夫だよ、父さん。

 うっわー、気持ち悪かったー。

 虫ってキライなのに……

 あんなに大きいの間近に来られると、ホントにキモチワルイ」


そうね。

人間大のサソリ。

気持ちワルイわ。

サソリって昆虫だったかしら。

確か、クモやムカデの仲間。

節足動物の一種。

正確には昆虫では無いけれど、大きく分けてしまえばムシと呼ばれる類いね。



「キャッ!

 キモチワルイ! キモチワルイキモチワルイー!!」


そうエステルちゃんが言って。

見回すと、小型船ジャーエヒのヘリにはいくつもの細長い肢が取り付いていて。

そこから黒い胴体と、にゃがく伸びた尻尾が出て来る。

サソリの魔物ダェーヴァ


何体ものパピルザクがわたしたちを襲ってきたの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る