第7話 ハイキック

「そう言えば、トーヤー隊長と、その泥棒。

 似たような服を着てますね」


アレシュ青年が言うわ。

確かにチャイナドレス風の衣装、似ているの。

トーヤー隊長は青い絹の様な服、下にはズボン。

銀色の刺繍飾りが中央に入ってる。

目の覚めるような服装。


泥棒少女の方も赤いドレス。

こちらはズボンは着けていない。

長めのドレスから足が見えているわ。

肩からウエストへ斜めに金色の飾りが着いていて。

確かに似ているの。


「これはミャンゴール族の伝統的衣装でデールと言うんだ。

 この娘のは……ふーむ。

 最近チャイニャの方でデールを真似た服が流行ってると聞いた事があるな。

 それじゃないのか」


「・・・・・・・・・」


その間も泥棒はにゃにか言ってるんだけど、みんにゃ分かっていにゃい。

追いかけていた男たちが追い付いてくるの。


「この女、もう逃がさないぜ」

「そこの人、ありがとう。

 その娘引き渡してくれ。

 店の支払いをせず逃げ出したんだ。

 とっちめてやるぜ」


3人の男たちが、泥棒に近付き、肩に手を掛けるの。

その瞬間。


ヒュッ!、と風を切る音。

男の一人が吹っ飛ばされていくわ。


見ると少女がドレスの右足を高く上げている。


ハイキックね。

あんにゃに足が高く上がるにゃんて!

かっこいいかも。


昔テレビで見た総合格闘技にゃんかを思い出すわね。

選手の男の人は筋肉ムキムキの迫力ある人がほとんどだったけど。

女性の方は細身でしなやかな体格をした、カッコイイ人も多かった。

この娘もそんにゃ雰囲気かしら。


いけにゃい。

この少女、盗人だったわ。

見惚れちゃダメね。


「抵抗する気なのか?!

 俺たちは街の護衛団だ。

 泥棒や暴力行為なら女の子だって見逃せないぞ」


アレシュ青年が剣を抜く。

冴え冴えとした刃物が光るの。


「アレシュ!

 街中で気軽に刃物を抜くんじゃない」

「でも、トーヤー隊長。

 この泥棒、男を蹴り飛ばしましたよ。

 俺だって剣が無きゃ、ヤラレっちゃいますよ」

 

その間に男たちも少女に近づく。


「このガキッ」


男の一人が刃物を取り出すわ。

剣と言うよりはナイフ、小型の刃物ね。


「バカッ、街中で……

 それも護衛団の前だぞ」


「だけど、このガキ手強いぜ」


泥棒少女の方はナイフを見ても恐れていにゃい。

左手を広げて前に突き出すようなスタイル。

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