第4話 不埒な妄想

アレシュ青年はエステルちゃんを見つめてるわ。

なんだかその瞳の中はハートマーク。

妄想の世界に入ってるんじゃにゃいかしら。


「……エステル」

「はいっ」


「エステル」

「はいっ?」


「エステル」

「な、なんでしょう、アレシュ先輩」


にゃんどもエステルって呼び捨てにして感激に浸ってるわね。

アレシュ青年……少し可愛くもあるけど……もうそれを通り越してバカバカのバカバカね。



「えいっ」

「うっぎゃあぁぁ!」


いきなりバカバカな男が悲鳴をあげるわ。

横に現れた人がアレシュ青年の目を突いたのね。


現れたのは青い衣装をまとった女性。

にゃんだかチャイニャ服みたいな服装ね。

絹のようなキレイな布地、ウエスト部分を布で巻いてるわ。

女性のスマートな体格が目立って格好いい。


「いきなり、何するんですか?!

 トーヤー隊長」


アレシュ青年は自分の目を抑えて泣きそうな声。

目つぶしを喰らったのね。


「美少女を不埒な目で見るからだ」


答えたのは、護衛団4番隊隊長トーヤーさんだった。


「アレシュ、美少女を見つめるコト自体は間違っていない。

 見てる人間を幸せにする究極の存在。 

 それが美少女だ。

 だが、しかーし!

 アレシュ、キサマの視線には下心が感じられたぞ。

 こんなに可愛く、美しいエステルくん。

 周りにいる人々に幸せを与える至高の芸術品。

 それなのに、アレシュは心の中で……

 一人占めしたい。

 汚してやりたい。

 そんな不埒な思いを抱いていただろう!」


トーヤーさんがアレシュ青年に指を突き付ける。



「な、なにを言い出すんですか?!

 自分はそんな……

 エステルさん、違うよ、違うからね」


アレシュ青年は大慌て。

目をツブされたのも忘れてる。

エステルちゃんは、え? と不審なモノを見る様にアレシュ青年を見ているわ。


「トーヤー隊長。

 ムチャクチャなコトを言い出さないでくださいよ。

 自分はそんなコト考えてなんか……」

「フッ、私にはキミの気持が分かるのだ。

 何故なら……私も同じ気持ちだからな!」


「エステルくんはカワイイ。

 カワイ過ぎる。

 自分の部屋に閉じ込めて一晩中愛でてやりたくなるのもアタリマエと言うモノだ。

 だが……私はアレシュ、オマエとは違う。

 美少女は万人の物と理解しているからな。

 不埒な欲望を表に出したりはしない。

 心の中でそっと思い描くだけなのだ」


表に出してる。

思いっきり口に出してるわよ、トーヤーさん。


あのねトーヤー隊長、ここ街の大通りなのよ。

アレシュさんに対するセリフは大きく間違ってはいにゃいかも。

だけどこんにゃトコで大声で言っちゃダメにゃのよ。

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