第5話 泥棒

「ちょっと、止めてください!

 トーヤー隊長も、アレシュ先輩も。

 ワタシたち目立ってます」


そうよ、ここは交易都市ホルムスの大通り。

いろんな人たちがたくさん歩いてるの。


青いドレスを着て、大声で叫ぶトーヤーさんは人目を引いちゃってるわね。


「仕事に戻りましょう、トーヤー隊長」


「そうね。

 大通りの巡回に来たってのに。

 アタシ達が街の人に迷惑かけちゃってるわよ」


お仕事。

大通りの巡回。

そうにゃのね。

エステルちゃん、ステュティラちゃん。

トーヤー隊長にアレシュ青年。

にゃんで一緒にいるのかと思ったら護衛団の仕事。

街のパトロールだったのね。


エステルちゃんはまだ見にゃらいだもの。

トーヤーさんたちが付き添いってコトかしら。


「そうだな。

 アレシュのせいで無駄な時間を喰ってしまった」


「……自分のせいじゃないと思いますが……」


「アレシュ、先頭を歩くんだ。

 キミはエステルくんの隣や後ろは禁止だ。

 欲望塗れの視線で見るからな」


「見てませんっ!」


そんにゃコトいいにゃがら、その場をはにゃれ歩いて行こうとする一行。

わたしは大通りの商店の影から見物してるわ。


この辺はお店がいっぱいにゃの。

キチンとした建物のお店。

テントみたいな市場、地面に布だけ引いて商品を並べる露天商。


商人やお客さんだらけなの。

さすが自由交易都市ホルムスよね。


おさかにゃも売ってるのよ。

砂の海の砂魚。

砂マグロに砂カジキ、砂イワシ。


イワシは砂を内臓からよーく洗って、オイルサーディンにするの。

生で食べてるのは見たコトにゃいわ。


砂エビ、砂カニ、油で揚げて柑橘系の果物を絞って食べるのね。

残念ながら、ヘレーナさんは猫のわたしにはくれないわ。


これは砂海の魚じゃにゃくて川魚にゃんだけど、ティラピアってのが美味しくて有名らしいわ。

白身魚でムニエルにすると、とても柔らかくて美味しいんだって。

気ににゃっちゃうわ。



わたしが大通りに漂う美味しそうな匂いに気を取られていると、いきにゃり声が鳴り響くの。


「ドロボーッ!!」

「そいつ、盗人だ。

 捕まえてくれ」


路地裏の店から人が飛び出してきて。

その人を男の人達数人が追いかけて行くの。


泥棒?

やはりどの世界にも泥棒っているのね。


捕まえてやろう、とも思うけど。

ここはエステルちゃん達の出番かしらね。 

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