第2話 デート?

にゃんだか黒ずくめの人がいるわ。

塀に身を寄せて隠れてる風にも見えるけど。

逆に挙動不審で目立つんじゃにゃいかしら。


わたしは壁を伝って降りていく。

そんにゃに興味あるワケでもにゃいんだけど。

ちょっと近くまで行って見ましょう。


その人はわたしが近寄るとビクンとした。


「な、何者だ?

 ……なんだ、ネコか。

 フッ、拙者に気づくとなかなかやるな。

 ネコは勘がスルドイと言うからな」


誰でも気づくと思うわ。

正直、街に黒ずくめの人って珍しいのよ。

だって、ここは砂の国。

日中は陽射しがキッツイの。

黒い布は熱を溜めこむわ。

服の中に黒を混ぜる人はいても、全身黒ずくめなんて暑くて倒れちゃうでしょう。


「フッ……私に気が付いた事は褒めよう。

 しかし……これには着いて来れまい」


男の人はにゃんだか一人で喋ってるわ。

大通りの外れの道で、塀にくっついていた黒ずくめの人。

動き出したか、と思ったら……あら姿が消えたわね。


どこに行ったのかしら。

すぐにわたしは気が付いた。

大通りの露天商。

商人さんが大きな長台に商品を並べてるの。

その台の下だわ。


商人さんは台に白いクロスを掛けてキレイにしている。

そのクロスの下、黒い服が見えているの。


追っかけて見ようかしら。

猫の狩猟本能。

逃げ隠れされると追いかけたくにゃっちゃうのよね。


わたしは上半身を低くして。

後ろ足に力を溜めて。

走り出しそうににゃる……けど、止めておくわ。

あの黒ずくめの人がビックリして暴れでもしたら、商人さんに迷惑だものね。


それにわたしの耳に聞き覚えのある声が聞こえているのよ。


「エステル……さん。

 エステルさんはこの通りは良く来るんですか?」

「えーと、良くと言う程じゃ無いですけど。

 母さんと買い物に来たりするわ」


「そうですか。

 何を買うんですか。

 お洋服とか、ははははっはは。

 エステル……さんなら、何を着ても似合いそうだな」


この声エステルちゃんと、もう一人アレシュ青年じゃないの。

まさか、二人で大通りで歩いてるの?

二人っきり?!

それって……まさか……デート!!!


エステルちゃん、まだ早いんじゃにゃいかしら!

……そうでもにゃいわね。

エステルちゃんももう中学生くらいの年齢。

そろそろ初デートくらい……


いや、やっぱりダメ、相手にもよるわ。

アレシュ青年じゃちょっと……

悪い子じゃにゃさそうだけど、頼りにゃいわ。

それにアレシュ青年は確か18歳。

年も離れてるわ。

もう少し大人ににゃってしまえば、6歳位の年の差にゃんて大したコトにゃいけど。

さすがに18歳の青年と12歳の少女と言うのはわたし的にあまり気持ちよくにゃいわ。


「アレシュ。

 なんかアンタ随分アタシに対する態度と、エステルへの態度違わない?」


これ、ステュティラちゃんの声。

にゃーんだ、やっぱり。

二人きりじゃにゃかったのね。

あーー、ビックリしたわ。

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