第55話 コスプレ好きの隊長

「もう時間なのに隊長はどうしたのよ」

「トーヤーさん、居ないよね」


「遅刻じゃない。

 ダメダメね、あたしがオシオキしちゃおうかしら」


ステュティラちゃんとエステルちゃんはトーヤー隊長を探してる。

支援部隊はトーヤーさんの元に集合する、と言ってたわね。


二人は気付いてにゃいけど、わたしにはニオイで分かってる。

すぐそばにいる、白い看護服、帽子には赤い十字の女性。


「トーヤー隊長、分かりづらいから止めてください」


声をかけたのは大剣を担いだ女性。

逞しい肉体、女子プロレスラーみたいと言ったら言い過ぎかしら。


「フッ、気づいたか。

 やるな、パルミュス」


「そんな変な恰好してるの、アンタだけだ。

 目立つに決まってんだろ」


「変では無いぞ。

 傷病者の看護や医療を行う恰好なんだ」


言いにゃがら女性は帽子を外す。

するとキリっとした眉、髪の毛をアップで細く結い上げた顔が現れる。

トーヤー隊長ね。


「なんだ、トーヤー。

 そこに居たのか」

「変な恰好のがいるから、もしかしてとは思っていたんだ」


「ほら、やっぱりトーヤー隊長だった」

「あの人、いくつ服持ってるのかしらね」


周りに居た人たちは自然にトーヤーさんを受け入れる。

驚いてるのはステュティラちゃんくらい。


「あわわ、アレ隊長だったの。

 エステル、教えてよ!

 ダメダメって言ったの聞こえちゃったかしら……」

「ムリだよ。

 ワタシだって確証無かったもん」


やっぱりトーヤーさん、タダの変装好きの変わった人よね。

日本ならコスプレ趣味とでも言うのかしら。

そうじゃにゃいかと思ったわ。



「全員揃ってるな!」


先程の逞しい女性、パルミュスさんが声を上げる。

隊長はトーヤーさんのハズだけど、この人もリーダー格にゃのかしら。


集まった人は50人弱ってトコロね。

半分は女性かしら。

男性もいるけど、見にゃらいかしら。

成人してにゃい年頃の子が多い。


「みんな、分かってると思うが今日の任務は支援だ。

 魔物ダェーヴァがやたら増えてるって言う森に突っ込む。

 俺らは本隊から逃げた魔物ダェーヴァの後始末。

 傷病者の手当て、搬送が主な仕事だ」


パルミュスさんは男の人顔負けの迫力ある声を上げる。

知らにゃい人が見たら彼女がリーダーみたい。


「うん、パルミュスの言った通り。

 成人前の見習いの人間はみんな傷病者担当。

 成人以上の者はパルミュスについて、周辺を注意してくれ

 私は看護婦さんをやるからな。

 ケガしたら言ってくれ。

 優しく看護してやるぞ」


トーヤーさんが最後を締める。

楽しそうに看護婦さんをやると言ってるわ。

うーん。

戦士たちへの号令には聞こえにゃいわね。


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