第36話 アントナン

「分かったわね。

 アターシは美しくてカッコ良い男。

 だから可愛くてキラキラした美少年が好きなの。

 美しいモノが美しいモノに惹かれる。

 トーゼンよね」


バゼルさんは絶叫して、少し満足したみたい。

大分落ち着いた調子ににゃったわね。


「アナータみたいにヘチャムクレでナマイキそうで、さらにアタマの出来もわるそーな女の子には理解出来ないかもしれないけーどね」


「なっ、なによー。

 ヘチャムクレって意味は分かんないけどムカツクわ」

「落ち着いて、ステュティラちゃん。

 相手は先生だよ」


プンスカしてるステュティラちゃん。

抑えているのはエステルちゃんね。



「あの……

 スイマセン。

 私はなんでここに居るんですか?」


いきなり訊ねたのは中年男性。


「俺、コックの求人募集見てきただけなんですけど……

 子供と一緒に勉強するなんて聞いてないですよ」


「アントナンさんですね。

 えーと、料理人で雇い入れたのは分かってますけど。

 規則なんで、最初は見習いとしての勉強してもらいます」


「はぁ……」


中年男性にアレシュ青年が説明してるわ。

おじさんは白い肌、青い瞳。

少し太り気味ね。

12歳の子たちと一緒に見にゃらい扱いされてるのが不服にゃのかしら。


「ちょっとアレシュ、アレシュ。

 なんでコックなんか雇ってるのよ」

「あー、バゼル隊長。

 ナシール副団長が決めたんですよ」


アレシュ青年は指を自分の目のハジにあて吊り上げる。


「いつまでも当直のヤツの弁当なんて取ってられるか。

 料理運ばせるのにいくらかかると思ってんだ。

 ヒマな奴にメシくらい作らせろ。

 なにっ、マトモに料理したコトあるようなヤツはいないって。

 んじゃ、料理人雇え。

 そいつに教えさせればいーだろ」


声も作り声、いつもより低い声を出してる。

それってばナシールさんのマネね。


「アハハハ。

 アレシュ上手い上手い」


ステュティラちゃんが笑ってる。


「後、アントナンさんにエウロペ語も教えさせたいらしいですよ。

 この人、こんなんでもエウロペ語もペルーニャ語も堪能なんで。

 バゼル隊長の補佐で言葉の先生もさせようって」



「ええっ、そんな話聞いてませんよ」

 

アントナンさんは驚いてる。

バゼル隊長は鼻をならすの。


「この団に入ってしまったんなら諦めなさ―い。

 副団長はトコトン人使いが荒ーいのよ。

 アターシだって、隊長させられて、しかも教育係押し付けられてるんだーから」






 

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