第37話 自由交易都市

「みんな分かってると思うけど。

 念のため、説明しておくわーよ」


「現在アターシたちが住んでるホルムスは交易都市。

 どこの国にも支配されてはいないーわ。

 ただし、ペルーニャ帝国には朝貢している。

 皇帝に貢物を送って、機嫌を取ってる。

 だけど、属国ってワケじゃない。

 誇り高き自治領なーの」


「ホルムスは誰の支配も受けない。

 どこの国の人間であろうと出入り自由、身分の上下無し。

 それが自由交易都市ホルムス」


「もちろん関税はいただくけどね

 それにカッコつけて見せーても。

 ペルーニャの属国に近い立場ではあるわね。

 帝国にアレコレ要求されてもそうそう逆らえないーわ」


バゼルさんが改めて説明している。

わたしはフンフンと木の枝の上で聞いてるわ。

そっか。

この街ってペルーニャの一部にゃのかと思っていたけど。

そういう関係だったのね。

日本人の感覚だと分かりづらいわ。

香港みたいにゃモノかしら。

ヘレーナさんとエステルちゃんの日常会話を聞いていても。

そんな詳しいコトはおはにゃししにゃいモノ。

よく分かってにゃかったわ。



「その分、もしも別の国、例えばエウロペから艦隊が攻めてきたりしたら。

 ペルーニャ帝国に護って貰える」


チラっとバゼル隊長がアントナンさんの方を見る。

アントナンさんはエウロペの人。

軽い皮肉にゃのかしら。


「少し東のヴェーダ国なんて大変なコトになってるわ。

 戦いに負け続けて、もうエウロペの言いなりね」


「そりゃ、偉大なる王国の連中の仕業です。

 エウロペ地方の人ってだけで、野蛮人の仲間と思わないで欲しい」


アントナンさんがさすがに言い返してるわ。

エステルちゃんはウンウンと頷いてる。

ステュティラちゃんは明らかにバゼル隊長のはにゃしが理解出来てにゃい風情。

机にラクガキして遊んでるわね。



「そいでもって。

 我ら護衛団が何なのかって言うと。

 そーんな、国同士の戦は知ったこっちゃねーわ。

 わたしたちはホルムスの街の民を護るのが仕事。

 街道や砂の海、たまーに街の中まで入って来ちゃう魔物ダェーヴァを倒す。

 砂の海に現れる砂海賊パイレーツの相手する。

 小さいトコでは街で起きる酔っぱらいのケンカの仲裁なんかも含まれるわーね」


「えーっ。

 じゃあどっかの国の軍隊が襲ってきても、護衛団は戦わないってコト?」


訊いたのはステュティラちゃん。

さっきまで遊んでたクセに。

戦いのはにゃしににゃるとマジメに参加するのね。

女の子にゃのに好戦的にゃんだから。


「そんなワケ無いでしょ。

 ハナシ聞いてた?

 アターシ達は街の民を護るのが仕事。

 軍隊に襲われたら街の人だって危険でしょーが」

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