くろねこ男爵の冒険 「その人は砂の国ペルーニャで猫侍に生まれ変わり、少女を助けて戦うのだっ!!」

くろねこ教授

砂の国の黒猫

その1 入団試験

第1話 ねこにゃの

わたしは猫にゃの。


「吾輩は猫である」そんな台詞から始めるのもいいけれど。

わたしは女性だ。

まだ生後六か月。

うら若き乙女にゃの。

吾輩とにゃのるのはキャラ付けが過ぎるよね。


わたしは街を走る。

交易都市ホルムスの裏通り。

ここは交易都市、いくつもの国と繋がる交易拠点。

街を歩く人々は日本とは大違い。

この砂の国の人らしいターバンを巻いた人々。

目の覚めるような青い綿服を着た人。

確かあれは東方のミャンゴールの人たちの服装。

猛々しい騎馬民族。

かなり昔にはこの地方にも攻め込んで来た蛮族にゃんて言われたりもするけど。

街を歩く彼らは温和でそんな風に見えにゃい。

いけにゃい。

観察してる場合じゃにゃいわ。

急がにゃきゃ。

超特急で路地裏を駆け抜けるわ。


エステルちゃんの大事な日にゃの。

エステル。

わたしの飼い主ヘレーナさんの可愛いムスメさん。


護衛団の試験日。

筆記試験は一昨日だった。

そっちも心配にゃのだけれど。

それはわたしには手を貸しようがにゃいわ。

でも多分エステルちゃんにゃら大丈夫。

今日は実戦の試験日にゃのね。

実戦の方が不安にゃの。

見守って力を貸してあげにゃいと。

そう思ってたんだけど。

寝過ごしちゃった。


試験が午後からだと思ってお昼寝しちゃったの。

屋根の上で日向ぼっこ。

日差しが暖かくて気持ちいい。

気が付いたらもうこんにゃ時間。


ドドーン!!

そんな感じでわたしの前に立ち塞がる。

二匹の猫。

大きいトラネコ、丸々と太ってる。

背の高い灰色猫、片目に傷。

この界隈を仕切ってるボス猫とその片腕だ。


「おい、クロいチビ」

「この道は俺らのにゃわばりにゃ」


「通ろうって言うにゃら出すもの出して貰おうか」

「くっくっく、高級かつぶしで許しといてやるにゃ」


身長で言ったらわたしの倍はあろうかと言う二人組。

違った。

二にゃん組。


「今日のところは素直に行かしてくれにゃいかしら。

 アタシ急いでいるんだにゃん」


わたしはそう提案してみる。


「ふざけるにゃ」

「ボコボコにしてやるにゃ」


うーん。

やっぱり駄目だったか。

野蛮な子達だにゃん。


わたしはキッと目を凝らす。

彼等には見えにゃいだろうけど、わたしの視界にステータス画面が浮かび上がる。


封印解除ステータスオープン

【スキル発動】

【威圧LV99】


「にゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「にゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


二にゃん組は震え上がった。

向こうからしたらいきなり目の前の仔猫がライオンに化けたような物かしら。

立ちすくんでオシッコもらしてる。


やり過ぎちゃったかしら。

御免にゃさいね。

わたし仔猫だけど、最強無敵猫侍にゃのよね。

わたしは二にゃん組の横を通り過ぎる。

さあ急がにゃいと。

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