第2話 真相は迷宮入り
鉄平は今日はソワソワしている。
今日は御影先輩と一緒だからだ。このメイズに誘ってくてた一学年上の先輩。髪の毛は真っ黒でとても長い。
背も高くスタイルも良い。宝塚歌劇団でいう男役のような凛々しさもあるのだ。
そして今日は2人きりであること。下心は無いと思っていても惑わされてしまう鉄平。
世話焼きで教えるのも上手な御影は鉄平にあれこれ手解きをした。一年して仕事に慣れてきたのも御影のおかげだと彼は思っている。
「さぁ鉄平、メイズの中を点検に行くわよ」
「はい」
遅番は最後にメイズの中を点検して清掃と忘れ物や落とし物、欠陥箇所がないかを全員で点検をしている。
薄暗い、道も人が2人通れるか通れないかくらいの幅である。先に御影が進む。ここは男の自分がと思っていた鉄平だが作業効率の良い御影が先に行ってしまうのだ。いつもならこの点検作業がいやになるのだがいつもきてくくれる人たちが安全に安心して心地よく過ごせるようにするのにはこの作業が必要なのよと御影に言われ、当たり前のことなのだが彼女に言われると作業も苦にはならなかった。
それと共に鉄平は細かい性格もあって御影との距離も広がる。
「くそ、ここにラクガキ」
壁に落書きは日常茶飯事。
「今日はマナーのいい人たちばかりだと思ってたんだけどなぁ」
ぶつぶつ言っていたら鉄平は御影を見失った。
「鉄平〜遅いぞー」
鉄平はまたか、と止まった。なぜなら前にいたハズの御影の声が後ろから聞こえたのだ。これは初めてのことではない。
「またか、またか、落ち着け俺」
鉄平は息を深く吸う。
「鉄平」
「鉄平」
「鉄平」
四方八方から御影の声がする。
「悪戯するなぁああああ!」
鉄平は誰だか知っている。迷路屋敷に住み着いている幽霊たちが時たま悪さをするのだ。
鉄平が幽霊をみえることを知っているから。
「こっちは仕事をして早く帰りたいんだ! おちょくるな!」
鉄平が叫ぶとフッと空気が変わった。息を深く吸う。
ヘロヘロになりながら壁づたいに歩いていく。このようなことは初めてではない。点検作業中は何度も幽霊たちにおちょくられて悩まされていた。
そしてようやく出口に辿り着いた鉄平は御影を見ると彼女は笑ってる。
「すんません! 遅くなって。点検箇所すべてオッケーでした」
「お疲れ様。大丈夫?」
「はい……」
御影は苦笑いしてる。
「全然大丈夫じゃない」
えっ? と鉄平は首を傾げる。すると御影が彼に近寄る。近寄られてドキドキが止まらない鉄平。
「せ、先輩?」
すると御影が鉄平の肩を持った。
「背中にたくさん背負ってるよ」
「へ?」
鉄平が振り返ると自分の背中にさっきまで悪戯していた幽霊たちが何体も積み重なっていた。
「うわあああああっ」
慌てる鉄平、冷静な御影。
「ほんと困ったもんだわ」
と、鉄平の方を素手でポンポンと払うと幽霊たちは変な呻き声を出して消えていった。
「へ?」
「あなたもお祓いの仕方マスターしないと疲れ取れないわよ。よく一年耐えれたわね……」
確かにこのバイトをしてから疲れが取れない、でもそれは学生生活とバイトでだと思っていた鉄平だが……。
「……先輩、あなたも?」
御影は振り返らずスタスタと行ってしまった。
「待ってくださいよー!!」
明日からは御影の学年がテスト期間、そのため御影は一週間バイトに来ない。
よく考えれば御影のことは未だに深くわかっていない。さらに彼女の謎は深まっていくばかりの鉄平だった。
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