(四)

 七年ぶりに再会した幼なじみ、玉川美咲みさきの長い告白を聞いて、俺の頭の中は完全に空白になっていた。いや、空白ではなく何をどう考えたらいいのか、完全に混乱していたと言う方が正しいかもしれない。髪を伸ばし化粧もして田舎にいたときとは大きく変わってしまった彼女の姿以外に、ようやく俺の目に飛び込んできたのは、テーブルの上で陽性反応を示している妊娠検査薬のスティックと、『喫茶店 ノレワール』のロゴの入った二つのコーヒーカップだけだった。


(続く)

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