シナリオ「ナイテイイヨ/ナカセテクダサイ」

高田"ニコラス"鈍次

第1話

ナイテイイヨ



女「ねえ・・私たち、もうこれっきりにしよう・・・」


男「え?・・どうして? 俺のこと嫌いになった? それとも、俺何かした?」



<彼女からの突然の告白に、俺の中にある真っ黒な淀んだ部分がむくむくと顔を覗かせた。

こいつ、いきなり何を言い出す?

それとも、本当にこいつを怒らせてしまう何かをしてしまったのか・・

心当たりは、何ひとつない。>

     



女「あなたのせいじゃないの。私の問題。もう決めたことだから。」


男「決めた、って・・こっちは訳が分からないよ。いきなり終わりにしよう言われて、はい、そうですか、なんて言えるわけないでしょ? ねえ、なんで? なんでそんなこと・・」



 <クエスチョンマークが脳内に渦巻く。

  でもあんまり問い詰めると・・・あ、や

ばい、泣かれちゃう>



男「もう・・・泣くなよ。いいよ、待つから。ちゃんと話してくれるまで。」



 <もう・・めんどくさいなあ。

  泣かれたらもう何にも言えなくなっちゃ

う。>



女「ごめんね。大丈夫。もう泣かない」


男「いや、全然大丈夫じゃないでしょ・・・だってさ、俺のこと嫌いになったんじゃないんだよね? お互いにまだ好きってことでいいんだよね? お互い同じ気持ちなのに、どうして別れなきゃいけないのかな?」


女「好きだから・・・だよ」


男「え? 何それ・・全然わかんないよ。」


女「言葉が足りないのはごめん。でも・・どうしてもうまく説明できなくて・・」



 <言葉は時として意味をなさない。

  言葉は想いを伝える手段であるのと同時

に、全く正反対の意味で捉えられてしま

うことだってある。

  言葉と言葉の間にある沈黙。

そこに真実は隠れている。>



男「わかった。泣けよ。泣いていいよ。でも・・・俺は認めないからな」


女「ごめん・・・」



 <涙は、雄弁だ。そこから零れ落ちてくる

本当の想いを、俺は救い出してあげた

い。だから、今は泣いていいんだ。>



女「私、あなたのことずっと応援してた。あなたの夢の話も何度も聞かせてもらった。あなたが夢を叶えることが、私の夢も叶うことになるって、ずっとそう思ってきた。でもね・・」


男「でも?」


女「でも、私じゃない。夢を叶えるには私が居ちゃいけないんだ、って・・」


男「そんなこと言うなよ! 俺にはお前が必要なんだって! 勝手に決めつけんなよ、そんなこと・・俺の夢のせいにもするな! お前が居なくなるくらいなら、夢なんてどうでもいい・・・」



 <焦ることなんかない。急いで答えを出す

必要はない。

言葉の意味を、言葉と言葉の間に渦巻いて

いる真実を読み取ることが大切。

うん、わかってる。

でも・・・感情のままに言葉は口から溢れ

出る。それがろくなもんじゃない、ってこ

とはわかってるのに・・>



女「違う! 私じゃないんだよ。あなたに必要なのは。私なんかじゃないんだ。だから私は遠くからあなたを見てる。たとえあなたがどこで何をしてたとしても、ずっと見守ってる。そうすることに決めたの。お互いのこれからの為に・・・」



 <黒いものに押しつぶされそうになって

押さえ込んで小さいままの光ってるやつを

一緒に大きくしたい

そう願うだけで少しは前を向ける気がす

る。だから・・・>



男「わかった。でもさ、焦って結論を出すことはないよ。しんどいんだよね。ごめんな。

俺、いつも自分の事ばっかりで、お前の話もろくに聞いてあげたことなかったし。

だから・・

だから遠慮しないで心の内を吐き出してよ。自分に嘘をついたってしょうがないもん。

俺、これからちゃんと向き合うよ。お前にも、自分自身にも。どんな結末になっても、もう逃げない。」


女「うん・・・」


男「泣いていいよ。」


女「うん・・お願い。今だけはあなたの胸で泣かせて・・・」



男<明日からはきっと>

女<明日からはきっと>


男<笑って生きていくから>

女<笑って生きていくから>

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