第76話 お嬢様
「・・・やっと、本音が出たな、ユミ。今、もっとボロを出すって言ったよな?つまり、お前はオレを陥れた護道の手口とか、何かを知ってるってことでいいんだな?」
「・・・さあ?でも、あんなのボロの内に入らないから。でもね、藤堂と香織を巻き込んで悪さをするのは許せないの。だから、私なりに考えて、調べたりもするわよ」
「それをオレに教えずに、簡単な情報だけを教えたのは、どうしてだよ」
「・・・あなたを試したの。あなたのこと、よくわからないって言ったでしょ。もし、あなたが・・・そうね・・うふふふ、わたしの想う人なら、わたしはもちろん協力するわ」
「お前、オレの事、好きとか言いながら、実際はオレのことも探ってるんだろ?」
「そうよ。もちろん、調査してるわ。だって、わたしより賢くて、それに運動も出来てって、そんな人がこんな所に居ること自体奇跡的なのに、護道と何か因縁があるようだし。あなたという存在が気にならない訳が無いじゃないの」
「そうかよ。オレもまさか、お前みたいなのが居るとは思わなかったよ。じゃあ、もっと大きなボロって、どういう事だよ?」
「・・そんな事、言ったかな?」
「はあ?言ったじゃねーかよ!この耳で、今聞いたから!それに、今もあんなのボロの内に入らないって言ったし、しらばっくれても遅いぞ!」
「ふ〜ん、そう」
「おい、とぼけるのかよ!」
「ボケてはいないから。まだ、うら若き乙女だもん」
「クッ!」
ダメだ。
ここで、『もん』とか使って来やがった!
でも、堪えろ、オレ!
で、どうする?
言うか?
手札を切るか?
さっきからのコイツのオーラは、安定している。
ちょっとピンクの柔らかな波動。
オレは、ユミの顔をよく見る。
可愛い。
ちょっと頬を赤らめて、オレの顔を見た。
目と目が合う。
ユミは、微笑する。
心は、読めない。
紫苑に似ている。
護道に染まる前の紫苑に。
このままでは始まらない。
ユミ、お前を少しは信じてみるか!
「ユミ・・藤原優美か・・・お前、フジグループ総帥の孫娘だよな。こんな事してるってのは、グループからの依頼か?それとも?」
「ふぅ~~ん、なんだ、知ってるの。でもよくわかったわね。やはり、あなたって、そういう人なんだ。いつから、疑ってたの?」
「同じ班になってから、っていうか、お前の自己紹介で、スゴイお嬢さんってわかったから、何でここに来たってなるだろ?それに、オレに対して、恋人になってもいいって積極的に来るからだよ」
「でも、藤原の姓なんていっぱいあるのに、どうしてわかったの?」
「それは企業秘密ってことで。でも、そんなお嬢さんが、まずは早乙女と親友とか、普通の小学校に通ってるとか、有り得なくないか?」
「それは、私の家の方針なの。庶民の人たちとお友達になったり、そういう質素な生活をしたり、庶民の生活を知るって事は、子供の時から身を以てやっとかないと、大きくなってからでは到底できないし、その庶民感覚っていうのがわからないままになるってことよ」
「うん?・・なんだ?その庶民感覚って、お前等金持ちに必要なのか?」
「当たり前じゃない!私たちは、いつも庶民の人たちのために働き、時にはこの身を犠牲にしてまで、庶民の事を想い、国の為、国民の為に尽くしてるのよ。そうして、私達も、少しばかりの恩恵に
「そうなんだ。オレは、そこまで詳しくはまだ教わって・・・あっ!」
「うふふふふふ、あなたはやっぱり、隠し事が下手なようね」
「な、何の事だ!」
「さあ、今度はあなたの番よ。おっしゃりなさいな、あなたの正体を!」
オレは逆に追い詰められたのだった。
オレには、言えるほどの材料はないし、まだ勇者にすらなっても居ないんだ。
だから、そんな家系の出身とか言っても、それで?って言われたら、どうするんだ?
それに、勇者なんて言ったら、ふつう、バカにしてるのか?ってなるよな。
じいちゃんやばあちゃんのことを話すべきなのか?
でも、オレ、二人の詳しい事は、よくわからねーんだ。
そういえば、二人はオレの能力を開発するのに、いろいろと教えてくれる。
しかし、二人の事は、何をやって来て、今、何をしてるのかもよく知らない。
ただ、二人は勇者として、聖女として惹かれ合ったっていう事だけしか。
オレは、自分の能力を高めようと、そして、自分の心が少しでもマシになろうと努力していただけだ。
やればやるだけ結果が出るので、オレは夢中で、二人の所で修行してきたし、これからもしようとしている。
それは、勇者になるためだよな。
二人の言葉の端々からは、勇者になるためって感じが特に最近はする。
昔は、オレの心を救うために、能力を開発しようとしてたんだと思ってたけど、今は違う。
そして、両親と縁を切った、あの日に、じいちゃんの関係の人達から少し教えてもらったし、彼等に、このユミのことも調べてもらった。
ただ、それだけのことなんだ。
オレは、ユミにどう言ったらいいのかを考えあぐねていた。
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