第48話

 休んで2日目。


 オレは、いつも通り、じいちゃんから教わった方法を忠実に守り、能力開発のための修練を行う。


 そしてまた、今度は紫苑のことを考える。


 あいつはまだ護道とは、ラブラブな関係ではない。

 だったら、今がチャンスなのではないか?


 紫苑をオレのものにしたらいいんじゃないのか?


 オレのモノ?


 ああ、違う。

 そんなんじゃない!

 紫苑と仲良くなりたいだけだ。


 でも、オレの姿は村雨ではない。

 だったら、一からやり直せる?


 オレは、とにかく、紫苑が護道に惚れてない事が確からしく思われた。

 確証はないが、あの時もあの時もあの時も、すべては護道からの一方的な行為だったとしたら。

 確かに、オレに都合よく解釈している。

 しかし、そんな事は、リセットできる。

 つまり、関係がない。

 ラブラブでないのなら。


 だって、あそこで、早乙女がウソをつく必要はないから?

 ああ、この考えは、この前と同じ、感覚的なものだな、だから失敗だった。

 早乙女がウソをつくメリットは、ある・・のか?

 ある!

 オレの同情を引き、更なる恋人行為を誘発する・・されたよ、オレ!


 愛おしくなって、キスしちまった!


 バカだ、オレ!

 バカだよ、クソッ!

 オレ、こういう時、なんか相手の感情がわかるスキルというか、能力が欲しいよ。


 ああ、アイツ、その同情を誘う発言に、涙というダメ押しで、オレ、すっかり騙されたよ。


 しかし、それらは仮定の上での仮定の話だ。


 冷静になれ、オレ!


 早乙女の事は、あの昇降口の件だ。

 アレと村雨が好きという事が矛盾しているから、そこがわからんとわからん。


 今は、紫苑との事だ。

 ラブラブでないかどうか、早乙女の発言は取り上げずに、考えると?


 クラスでのアイツ等は、一緒の時が割りとある。

 だが、もちろん紫苑は、女子と多く居る。

 特に、早乙女とかだ。


 話しかけているのは、いつも護道だ、ざまぁみろ!


 紫苑は、オレと早乙女の仲を深めようとしている。

 親友と紫苑は思ってるからな。


 紫苑は、護道とオレ、どっちを応援したのか?

 わからん。

 因みに、早乙女は、最後裏切った。

 いや、それならなんでデートを早苗ちゃんに譲らなかった?

 いや、ここのところは、いろいろ考えられるので、ここまでにしとく。


 あと、なんかあったか?

 ああ、マックでの事か?

 早苗ちゃんのチチ・・いや、事故があった時、後ろから殺気が放たれたな。

 その時、紫苑の方が怖かった。

 よく解釈すると嫉妬、他だと親友想いか、女性の敵とか?


 そんなとこか?


 それから、またわかった事。


 良くも悪くも、結果的に早乙女が中学時代に護道の魔の手から紫苑を救った。

 これは、本当だろう。

 早乙女自身が自分の事をそう言って恋人を作らなかったという理由にするメリットはある。


 自分はウブだ、デートは初めてとかの理由づけになるからだ。

 だが、紫苑もとなると、早乙女がオレにそれをわざわざ言うメリットはない。


 だから、信用してやる。


 あっ、そうだ!

「カズトくん、おはよう」って、護道より先に言われたよな。

 あの後、護道が怒ったけど、うまくはぐらかせたよな。

 そんな事があったけど、紫苑は、オレにカズトくんとか、護道の前でも平気で言ったぞ。


 オレの方が後ろに護道が居て、ヒヤッとしたからな。


 あの自然な感じ、あれは、そうだよ!

 やはり、紫苑は!


 今だ!

 高校生になった今、この時こそチャンスだ。


 結論、オレは、藤堂一人として、一から紫苑との関係を築いていく!


 そして、早乙女とは、別れる!


 オレは、紫苑がまだ好きなんだ。

 オレは、そもそも、この感情が消えなかったから苦しんだんだよ。


 だから、もう、迷わない!


 ただ、早乙女と別れて、すぐに紫苑と恋人にはなれないだろうな。


 いや、もしすぐになるような女なら、もう昔の紫苑じゃない。


 そうだ、でもそれでフラれたら?


 そんなオンナ垂らしは、イヤとか?

 ないないない!

 オレ、そんなんじゃねーし!


 あっ!

 なんか、それ、誰かから言われたな?

 誰だっけ?


 まっ、いっか!


 よし、紫苑に告る!

 あっ!

 早乙女と別れるのが先だな。


 うう、気が重い、でも、やらないと前に進まないから。


 早乙女、お前の疑惑がすぐにはとけそうにないから、仕方ないよな。


 オレは、お前に気に入られようとしたのは、紫苑の情報を得るためだった。


 だから、そこへ戻るだけだ。


 早乙女、悪いけど、別れるぞ!


 オレは、決意を固めたのだった。

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