第39話 パートⅠ だったのか!

 ~~~~映画の続きをどうぞ


「ぼくは・・・・美しい君のような聖女に、殺すとかしてほしくないんだ!聖女っていうのは、本来なら癒してくれる優しい女性の事のハズなんだよ。君が聖女として選ばれたのなら、きっと神様は君の優しさを認めて、その癒しをする才能を与えたって事なんだろう?だったら、君は本来、全ての生き物に対して優しく振る舞うべきなんだ!君には、聖女の癒しのチカラという優れた御業みわざが使えるハズさ、知ってるよ、ぼく(前世の知識で適当な事を言ってしまったけど、なんとかシオリに似たこの聖女に、殺しなどさせないように出来ないかな?)」


「美しいなんて、そんな事・・・それに、癒しの魔法は、まだ、習ってないの。わたし、まだ修行中だから」

(優しさって、わたし、魔獣を人間族から守るっていうのが優しさだと教わったけど、どっちの言う事がホントなの?)


「ごめん、エラそうな事言って。僕も修行中なんだ。だったら、お互いに頑張ろう!君は、癒しのチカラを習得すること。僕は、剣術をもっと上手になること。どう?約束しようよ!」

(もうひと押し!)


「えっ?でも、私、ここへは、たぶんもう来られないと思う」


「そうなんだ。じゃあ、ぼくが会いに行くよ!君は、いつもはどこに居るの?」

「私は、王都の王宮に居るわ。王宮に聖女用の部屋があるの」


「ふぅ~ん、じゃあ、王女様みたいな感じかな?」

「うふふふ、そんな良いモノじゃないわ」


「これ!君にあげる。この髪飾りは、君を守ってくれるよ。そして、もし、ピンチの時には、この髪飾りにお願いをして。そしたら、助かるから。きっと、助かるからね」


 それは、スズランの花を象ったモノだった。

 可愛い可憐な白いスズランの花が、揺れる度にシャランと小さな、可愛い音を立てる。

 因みに、その花言葉は、幸福の再来、純潔、聖女の涙とかと言われている。

 シンは、それを知って渡したのだろうか?

 シオンも、その意味に気がつく事があるのだろうか?



「ありがとう!綺麗ね・・・あの、いつもこんなモノを女の子にあげようと持ってるの?・・あっ、ごめんなさい、もらってるのに、こんな事言って」


「ううん、いいんだ。これはね、僕の大切なひとへの贈り物だったんだ。渡せずに、ずっと持ってたことを思い出したんだ。ごめんね、他のひとの予定だったモノで」


「ううん、いいの。うれしい!私、たぶん、こっちへ来てから初めてもらったよ」


「えっ?こっちへ来てって?」

(まさか、この世界に来てって事?)


「えっ?何の事?」

「今、キミ、こっちへ来てから初めてだって?」

「そんな事、言ったかな?」

「・・・君、よく物忘れするほう?」

「はい?面白くない冗談。うふふふふ」

「でも笑ってるじゃん、あはははは」


 ビーー、ビーー、ビーー・・・・。

 シオンの懐から、音がした。

 これは連絡用の魔道具だ。

 お互い、通信もでき、そしてだいたい何処に居るのかもわかる仕組みになっている。


「わたし、行かなくっちゃ!また、会えるかな?」

(会えないわ、たぶん。私には、聖女としてのお務めがあるから。それに、王宮には一般の方が入れるわけないし。だから、もうお別れ。でも、思わず、わたし、会えるかななんて言ってしまったわ、なぜかな?)


「会えるさ。その髪飾りに、会いたいとき、お願いしてみて。ぼくに伝わるから」

「じゃあ、助けてくれるのって、シンなの?」

「ああ、君がピンチの時、絶対に助けてやるよ」

「うふふふふ、ありがとう!!じゃあね~!」

(ウソでも、うれしいわ)


「ああ、じゃあ・・・・・あっ!聖女の君ーーー!!君の名前はーーー?」


 シオンは、ちょっと振り返っただけで、笑って手を振って行ってしまった。


(彼女、名前は何て言うんだろう?シオリって名前じゃないのはわかったけど。ホントに好きなのか、ぼくは彼女を?出会ってすぐに好きになるとか、ぼくは寂しいヤツだ。あの聖女は、ただ顔がそっくりなだけなのに。またぼくの片想いに過ぎないよな。彼女に肩入れをしても良い事なんか無いか、なにせ、彼女は聖女なんだから!バカだよ、ぼくは。また、この前のように、彼女には他の・・そうさ、勇者だっけ?そいつと・・あっ!勇者と聖女は、そういう関係になってるんだっけか?ああ、またやっちゃった!あんなのあげなきゃ良かったよ!もう、!だから、名前を言ってくれなかったんだ!)


 シンは、そんな事を考えていたが、一方、シオンは?


(わたし、あの人の話し方とか仕草とか、なんか知ってる?うふふふ、そんなことないわよね。でも、この髪飾り、可愛い!)

「ちょっと、これを付けてみようかしら」


 シオンの頭に髪飾りが付けられた。


 髪飾りのスズランがシャンっと鳴った!


「えっ??」


 シオンは、その場でうずくまってしまったのだった。



 ああ、何という事でしょう!!


 二人は、期せずして、出会ってしまった。

 そして、シオンは、どうしてしまったのでしょうか!!



 この出会いから、確かに、二人の運命の歯車が、再び回ろうとしていた。


 そして、二人のシンは、どうなる運命なのか?

 シオン=(イコール)シオリは、記憶を取り戻せるのか?

 そして、シオリとシン=真一の運命は、また、いつ、どのように交差するのか?


 もう、この映画を見た君は、「君の名前は?」の虜となったよね!

 座して待て!

 パートⅡを!!


 そして、君は、更なる彼らの非情なる運命を知る生き証人となる!!



 そして、シオリ役の可愛い女優が可愛く歌うと共に、特典アニメ映像とNG集が画面に映し出された。


 ~~~~やっと、映画が終わった!


「ウザいね、最後のナレーション」

「うふふふ、それ、みんな言ってる。でもね、いいんじゃない、この映画、すぐにパートⅡが始まるんだよ。ねっ!絶対見に行こうね、次のも!約束だよ!」


「ああ、行こう!」


 オレは、この映画のファンになってしまった。

 真一、お前は、オレだな。

 そして、オレはお前だ!


 これから、帰ったら、早速じいちゃんに、オレの決意を聞いてもらう。

 そして、どんな特訓にも耐えてやるぜ!


 オレは、そう決意したのだった。


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