第23話
「キャプテン?」(オレ)
「ああ、ごめん」
「ボー――――ル!!!ボー――ルワン!!」
そういうことだ!
少し外角へ変化しながら落ちたボールはスプリットだった!
しかも、握りが深いので、落差がかなりあり、たしかに判定が難しい。
ショートバウンドでキャッチした、このキャッチャーはとても上手い。
つまりは、何回も護道のスプリットを捕っているってことだ。
スプリットを投げて、しかもボールになるボールを投げるか?
初球なのに?
護道は、ホントはオレを舐めてはいなかったのだ!
舐めた言葉を言いながら、本気で行くとは言ったけど。
たしかに、言葉通りの本気だった。
コイツ!
「キャーー!!」
「すごーーい!!」
「おしいよ、おしいよ、ストライクほしいよ!」
「護道く~ん、がんばって~~!!」
「護道ーー、負けんじゃねーぞ!!」
「護道く~~ん、信じてるから~~!」
この信じてるって言ったヤツ、翔子さんなんだけど?
しかし、護道の子分、おちょくってんのか?
いいのか、こんな声援で、護道よ!
「藤堂、どうしたー?」
「藤堂、ファイト―!」
「藤堂く~ん、今度こそ~!」
なんか、みんな間違ってない?
今度こそって言ったのは、田辺中の加藤だ。
オレ、ボールだから見送ったんだけど。
みんな、ルール知ってるのか?
ああ、そうか、ボールってコールが聞こえなかったかもな?
キャプの声、低すぎるから。
それに、手をなぜか横に振ったから、ストライクだと思っちゃったのかな?
まあ、どうでもいい!次のヤツをホームランにするから!
「カズト~~、一発~~~!!」
早乙女、お前、やっぱ恥ずかしいぞ!
「護道く~~ん、がんばって~~!!」
シオンだ!
がんばってしか、声の掛け方知らねーのか?
「護道く~~ん、ステキ~~!!」
クソ久美子だ!
気持ちが悪いぞ、お前!
できるだけ、ギャラリー達は見ないことにする。
「よく見たな!って言うか、怖気づいてバットを振ることが出来なかったのか?だったら、良い事を教えてやるぜ!バッターってのはな、バットを振らないと当たらないんだぜ、藤堂!あははははは!」
「そうだったんだ!アドバイス、ありがとう、護道君!」
護道に対しては、表面上は、バカ好青年ってキャラにしてるからな、オレ!
「行くぞ!藤堂!!」
「来い!護道!!」
また、二人の間に・・・・・。
オレは、2球目もスプリットの予感がしていた。
もしそうなら、どうする?
あの落ちるヤツを掬い上げても、ホームランは難しい。
しかし、やるしかねー!
心を静め、集中!
いや、心を滾らせて集中だ!
クソッ!!
やってやる!
モーションを見る。
捩るのか?
しない!
予想通りか?!
オレは、ホームランになるようにスウィングの軌道を考えていた通りに準備に入った。
それがいけなかった!
オレは、奴の握りが見えた瞬間、あの捩りはヤツのフェイクだとわかった。
そこまでするのかよ!
フォーシームだ!
いや、シュート気味の回転がかかっている!
オレは、後ろへのけぞった。
危なく、顔面に当たりそうだった。
「「「「「「キャーーーー!!」」」」」」
「うおーーー!!」
「やりおるのーー!!」
「すっげーー!!」
「もうちょいだったな!」
「マジかーー!!」
「やべーーー!!」
「盛り上がってきたぜーー!!」
ボールは、練習の時より数段速い。
田辺中のヤツ等がやられたってのは、ホントだった。
キャプテンの速球より、というか、比べるのもおこがましい程の速さだ。
オレの全力よりは劣るがな。
「ごめんごめん!」
そう言いながら、笑ってるぞ、コイツ!
「藤堂君、大丈夫?」(早苗)
「大丈夫だ」
「頼むぞ、護道!しっかり投げろよ!ボー―ルツー!!!」
「藤堂ーー!ファイト!!」
「藤堂、やり返せ―ー!」
「藤堂、がんばれーー!!」
「藤堂く~~ん、がんばって~~~!!」
えっと、誰だ?
って、もうギャラリーは見ないことにしてるんだった!
「カズトーー、無事に帰ってきてーー!!」
なんか、戦場に送り出されたようなセリフ、おまえ!
「護道!がんばれー!」
「護道君、がんばれー!」
「本気だ!護道だ!本気だ!どうだ?やっちゃえ!護道!!」
チッ!
お前らだろ、もうちょいとか言った野郎は!
「護道君、ファイト―!ステキ―!」
これ以上、ファイトされても困るんだがな、久美子のバカ!
久美子と早乙女だけは、わかった。
って、もうコイツ等の声援、いらなくねーか?
次でケリをつけてやる!
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