片想いから始まるファンタジーがあってもいいじゃないか!~~幼馴染をはじめ、誰からも拒絶され病んだオレが勇者となり、苦難を乗り越え世界を守って、マジメに真摯に勇者ハーレムへ突き進む物語

風鈴

第1部 現代ファンタジー?

第1話 変態と言われたオレ

 オレは、当本牧村雨とうほんもくむらさめという名前だった。

 まことに珍しい名前だ!


 くそっ!!

 この名前のせいで、オレのあだ名は、唐変木とうへんぼくと決まった。


 小学校の時に、みんなであだ名を考えてみようという特別授業があった。

 それまでは、オレの事、カッケー名前ってことで噂に昇っていたくらいに有名だったのに、それからオレは、坂道を転がっていく人生を歩むこととなった。

 えっと、別に、有名だっただけで、人気者とか、よく女子にモテるとか、そんな事ではなく、むしろ逆に、虚弱系男子だったけどね。


 小5の時だった。

 先生は、あだ名をつけることで、親近感をお互いが持ち、そして、いろいろと考えることで、お互いを知りあえる機会にもなって、とってもイイ事だって話をした。


 しかし、しかしだ!

 子供は残酷な一面を持っているという事を、性善説で全てが語られるという日本の教育の在り方には限界があるという事を、この時の人の良い女教師には理解の外であったのであった。


 とうへんぼくは、やがて、変な僕に、そして、変態にとその日のうちに進化していった。


 オレには、親友と呼べるヤツはいない。

 それに、身体は、小さく、よく病気をして親を困らせた。

 つまり、虚弱だった。

 そして、運動音痴で、勉強も成績が良いわけではなく、何も良いところなんか無い、つまらないヤツだ。



 幼馴染だけは、オレの事を優しいと言ってくれるし、なぜか、ムラサメは能ある鷹さんなんだよって言ってくれる。


 彼女は、何を勘違いしているのか知らないが、ムラサメは出来る子だといつも、そう言う。


 そして、彼女だけは、オレの事をイケメンだと言う。

 それから、学校へは、低学年の時は彼女と手を繋いで、そしてその時までは一緒に彼女と登校していた。



「おい、変態!お前、紫苑しおんちゃんと馴れ馴れしくするんじゃねーぞ、こら!!」

 こいつは、語尾にコラって付けるのが好きな、ゴリラのような顔をした、ゴリラのような体格の護道剛三ごどうごうぞうだ。

 学年一の力自慢で、悪ガキで、不良の年上とかともつき合いのある、ガキ大将だ。


 紫苑とは、オレの幼馴染で、笑顔の可愛いボブの髪の毛が似合う、学年でもトップクラス、このクラスでは一番人気のアイドル的美少女だ。

 フルネームは白藤紫苑しらふじしおんと言って、あだ名は「しおん」だ。


 いや、これって、あだ名なのか?まんまじゃんって、オレは紫苑の親友の久美子に言ってやったら、変態に言われたくないって言ってきやがった。


 それから、オレのあだ名は、変な僕から変態になったんだがな!!


 オレは、剛三に言った、言ってしまった。


「別に、僕、紫苑に何もしてないよ」

「あ、あたりまえだ!変態のお前が、何かをやるとか、有り得ねーからな!!コラ!お前、しおんのことが好きな訳じゃねーだろうな?ハッキリ言ってみろや!おい、変態!!コラ!」


「別に・・・幼馴染ってだけだから・・・」

「そうか!!しおんのこと、お前は嫌いだったんだな!!おい、こら!!みんなーー、この変態はしおんのこと、大嫌いだってよー!!嫌いだから、話したくねーし、一緒に登校とか嫌で仕方がねーってよ!!コラ!それでよー、この変態は、そこのブー子が好きで堪らんらしーぞ!!コラッ、知らんかったけど、ベストカップル誕生じゃね?やったな、変態!!ブー子も好きだってよ!!コラ!」


 ブー子とは、身体がクラス一番の膨よかな女子で、顔も膨よかで、鼻が豚さんのような女子で、いつも汗をかいてる様な女子で、でも、クラスで一番大人しくて、オレは優しい彼女の性格を知っていた。


 紫苑は、突然、泣き出した。

「ああっ!!変態がしおんを泣かしたぞ!!コラ!!」

 すると、剛三の取り巻きが、騒ぎ始めた。


「変態が我らのしおんを!!」

「なんだと、この変態の癖に!!」


「ええーー、しおんちゃん、かわいそう!!」

「しおん、大丈夫?おのれ、変態!!しおんが・・しおんがかわいそうよ~~!!」


「なっかしたーー!!そっれ!なっかしたーー!!そっれ!なっかしたーー!!」


 取り巻きが煽った。


 そして、口々に誰もが、やんちゃな子はもちろん、女子も、大人しそうな子も、みんなが合唱した!


 なんて一致団結する、絆の深いクラスメイトたちであろうか!!

 こういうクラスを、みんなで一人を虚仮降ろせる素晴らしい団結力を見せるこのクラスを、あの一見すると優しげな女教師は、確かに作り上げるのに成功したようだ。


 しかし、ただ、そのブー子だけは、クラスの者達に同調することはなかった。

 それを目の片隅に捉え、また、一方では、親友の久美子の胸の中で紫苑が泣いているのを目の片隅に捉えてもいた。


 久美子は、もちろん、大きな声で、なっかしたーと叫んでいた。


 やがて、一通り騒ぎ立てた後で、オレには次の段階が訪れた。


「おいっ、変態!!クラスのみんなは、お前に土下座しろってさ!コラ!なあ、委員長も言ってやれよ!!コラ!」


「そ、そうね、泣かしちゃったんだから、謝るのは当たり前だと思うわ」


 委員長というのは、このクラスの正義の心ともいうべき女子で、誰にでも気軽に声を掛ける気さくな一面と、正論を振りかざしてふざける男子から女子を庇う姉御肌的な一面と、学年でもトップの成績優秀者で運動神経も良いという優等生の一面と、スラっとして整った顔立ちの美人という何面をも併せ持ち、この剛三をも頭が上がらない存在だ。

 名前は、早乙女香織さおとめかおり


 香織にお墨付きをもらった剛三は、調子に乗って来た。

「おいっ、変態!!そういう事だから、早く床に額をつけろよ、コラ!!」


 オレが渋ると、取り巻きが羽交い絞めにし、オレを床に跪かせると、頭を掴んで床に顔を打ち付けた。


「僕、これから床を舌で舐めますので許してください、だって言ってるぜ!コラ!変態だぜ、こいつはホントに!!アハハハハハ!!おいっ、お前らも笑えや!!アハハハハハ!!


「アハハハハハハ!!」


(小声で、剛三の子分が舐めろよって、オレを脅す。舐めねーと、ブー子を痛い眼にあわせるぞと脅迫する)


 オレは、彼女だけは、彼らになびかなかったことを知ってたし、オレのせいで他人が傷つくのが嫌だったので、舌をベロっと出した。


 いいよ、やってやる。

 こんなことで、死ぬわけじゃないから大丈夫だと、オレは汚いとかいう気持ちを捨てて、人間としての誇りを捨てた。

 オレは、みんなが見ている中、床を舐めた。


「うわーーー!!キモ―――!!!」

「変態よ、変態!!」

「うげーー、そこまでしたいのか!もう、コイツ、なんか人間じゃねーな?」


「ああ、でもよー、ただの変態じゃねーかもよ!こいつ、この舌で女子とキスしたいって言ってたしな!!コラ、変態が!!」


 無い事無い事をでっち上げられ、それに反応する、子分や女子達。

 オレは、委員長の端正な顔が歪んで、オレを変態認定しているのを見た。


 オレは、いつの間にか、紫苑がオレを怯えた目で見ているのを確認した。


 オレは、ブー子が顔を背けたのを確認した。


 その日から、オレは女子からはキモがられ、紫苑からも無視され、早乙女からも無視されるようになった。


 もちろん、紫苑と一緒にもう登校はしていない。


 ブー子は、女子のあるグループからいじめを受けていたが、その時から学校には来なくなっていた。


 オレは、誰からも無視されるので、グループで何かをやるとかいうことが実質、出来なくなった。


 そして、筆箱や靴を隠されたりと、これはしつこくやられた。


 泣きながら、ゴミ箱とかを漁ったりもした。


 先生には、言わなかった。

 言う勇気など、既になかった。

 というか、そんな事を先生に言うという考えは、オレにはなかった。


 事が大きくなるのが嫌だったし、先生にどう言うかもわからないし、そもそも先生に言う事自体がはばかられた。


 そんなに、先生にいい感情がないし、あまり話した事もないのに、そんな惨めな事を言う事なんて論外だからだ。


 先生というのは、まだ小さなオレにとっては、怖くて遠い存在だったから。


 頼れる者など、誰も居なかった。


 そして、オレは、心が病んだ。


 そして、オレは、学校に居場所がなくなったのを、やっと悟ると、ブー子と同じで、やはり不登校となったのだった。




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