魔王

うえはら

第1話 高校生活

 高校2年生になって初めての彼女ができた。


「あきらくんは行きたい場所ある?」


 俺、普天間ふてんま あきら日雷ひらい あかねの彼氏だ。


 学校の放課後、

 ファミレスで初デートの予定を立てているところである。


「(どこに行こうか迷うところだな)」


 やはり最初は水族館か?それとも動物園か、、、

 いや、動物園はあまりおすすめしないとネットの記事で見たな。


「水族館はどうかな?」



「いいね!私、水族館好きだよ!!」


 茜は笑顔で答える。



「じゃあ、決まりだな。」



 つぎの休日、俺は茜と水族館に行った。       

 制服以外の茜を見るのは初めてで胸が高鳴っていた。


「その服かわいいね、似合ってる。」


「そうかな、、、ありがと!」


「あきらくんもいつもよりかっこいいね!」


「あ、ありがとう。」


 こんなラブラブ会話をかましつつ、さっそく水族館の中に入った。


 水族館の中は小学生の時以来だ。

 久々の水族館と茜といる幸せでこの上なく楽しい時間を過ごしている。


「蛸ってかわいいよね、賢いし」


 茜が突然こんなことを言い出した。最近の女の子の流行は蛸なのだろうか、、、?


「かわいいか?昔は悪魔の魚って言われてたらしいけどね。」


「へー、、、悪魔かあ、あきらくんってさ悪魔っていると思う??」


「いないと思うけど、どうしたの?いきなり。」


「なんとなく聞いただけ!そうだよね、悪魔なんていないよね。」


「(茜って案外不思議ちゃんなのか?)」


 2年生のクラス替えで初めて出会った茜とはまだ2、3カ月しか一緒にいない。茜のことをもっと知って理解してあげたい。俺はそう思った。




「今日は楽しかった!ありがと!!」


「こちらこそ楽しかったよ。ありがとう、それじゃ、、、」


「わたし、最後にあきら君とぎゅうしたいな」


「え、いや、う、うん。」


「(ここでビビッてたら男が廃るな)」


 「ぎゅううう、あきらくんっていい匂いするよね」


「そうかな、」


「うん、わたしこの匂い好き。」


 




「じゃあ、またね。」


「うん!またね!」


 デートは無事成功、手もつないだしハグもできた!


 彼女とはこんなにも良い存在なのかと実感した。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 次の日、俺は昨日の幸福感に浸りながら学校に登校した。

 教室に着くとクラスメイトの水瀬みずせ たかしがこちらに寄ってきた。


「昨日はどうよ?」


「最高だった」


「いいねぇ、ラブラブじゃん。」


「いいだろ。」

 

 イケメン、高身長、剣道部の崇とは小学校からの付き合いだ、

 恋愛相談もよくしている。


「でもこれからが大事だぞ、例えば、、、」


「あきらくん!」


「ど、どうした!?」


 茜がいきなり声をかけてきた。茜とは学校の中ではあまり話さないから驚いてしまった。


「今日さ、放課後暇かな?」


「暇だよ?」


「よかった、あとで校舎裏に来てほしいの。」


「いいけども、どうしたの?」


「わたしね、あきらくんとふたりで話したいことがあるの。」


 何の話かは気になるところだが茜のお願いだ、断ることはできない。


「わかった、じゃあ後で校舎裏で。」


「うん!ありがとう。」


 崇は何かを聞きたそうな目でこちらを見ていたがこっちこそ疑問しか持っていない。放課後になればわかることだ、あまり考えないようにしておこう。


「ほんとにラブラブだな、さっきの話の続きするぞ?」


「おう。」




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「キーンコーンカーンコーン」


「(ふぅ、やっと終わった)」


 今日は座学多めの授業で疲れた。特にやることもない写真部の俺ならばいつものようにささっと帰るところだが、今日は茜に呼ばれているから予定ありの放課後だ。


 俺は駆け足で校舎裏に行った、はやく茜に会いたいからだ。

 俺の教室から校舎裏までは無駄に長い。高校生になってからまともに運動をしていない俺はこれだけでも一苦労だ。そうこうしているうちに校舎裏についた。そこには俺より先に茜がいた。



「ごめん、おそくなって。」


「いや?わたしも今来たところ。」


「それで、話って何?」


「私ね、あきらくんと付き合えてよかった。」


「うん、俺も。どうしたの改まって?」


「なんであきらくんは良かったって思ってる?」


「そりゃあ、こんなに可愛いし、人として立派だし。」


「あはは、ありがと。私自信ついた。」


「自信?」


「うん、人をだます自信。」


「え?」


 「何を言っているんだ?」そう思った。しかし、その思考は一瞬で消えた。茜の手から光りながら何かが出現した。目を開くと、彼女はファンタジーな剣を握っている。まるでゲームや漫画に出てくるような剣だ。それも特大級の大きさである。俺一人分はあるだろうか…。

 それを見た瞬間、彼女が普通の人間とは違う存在であることは容易に理解することができた。


「あきらくん!私うれしかったの。あきらくんがぎゅうしてくれたこと。」


 そんなことを言う雰囲気じゃないだろう。俺にそんなことを言っても困惑しかできない。この状況を説明してほしい。


「ぎゅうしてくれたからよくわかったもんね!私は間違ってなかったこと。あなたがすべてを持つものだということ。」


「意味が分からない。茜、どういうことだ?」


「意味なんてわかんなくていいんだよ…。あなたはここで私に殺されるんだもん。」


 彼女の眼が黒色から金色に変わった。俺は彼女の愛が殺気にかわるのを感じた、それと同時に逃げる態勢をとった。


「先に言っておくけど、あなたが逃げることはできないよ?」


「そんなのわからないだろ。俺は逃げさせてもらうよ。」


「おとなしく殺させてくれればお互い楽なんだけどね。」


 茜はそう言うと歩いて俺を追いかける、まるで俺なんかいつでも殺せるかのように。

 茜が俺を見失うように俺は角を通るルートを選んで逃げた。


 しかし、逃げてる途中である違和感を感じた。人がいないのだ。生徒も先生も用務員でさえ。


「(なにか不気味なものを感じるな。)」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ハァ、ハァ…。」


「(なんとか逃げ切れたか?)」



「あれ、あきらじゃん。茜となにはなしてたんだよぉ。息きらしてどうしたんだ?もしや、ついに茜とヤッたか?」


崇が笑みを混ぜながら言う。


「ハァ、わらいごとじゃないぞ。ハァ、茜がおかしくなってる。」


「おかしくなってる?何言ってんのあきらぁ。そんな激しいプレイだったのか?」


ある意味激しいプレイだった。こんなに走ったのは何年ぶりだろうか。


「そもそもそんなことしてない。っていうか人のことからかいまくりの崇君は部活に行かなくていいのか?」


「あぁ、部活ねぇ。まぁいいよ。お前を殺すためにきたから。」


 俺は耳を疑った。親友だと思っていた崇がさらっとそんなことを言うなんて。まさか茜に操られているのか?


「じゃあ、死んでくれ…友よ。まぁ、どうせお前のことだ復讐に来るだろうな、、、あいつらにそそのかされて。可哀そうに。」


 崇もさっきの茜と同じように光とともに剣を出した。茜の剣よりかは小さかったが、俺をひるませるぐらいのインパクトはあった。俺は親友に対するショックと絶望で体が震えていた。


「(俺はもう逃げられない。)」


「じゃあな、あきら。」


 俺は崇に刺された。

 俺が何をしたというのか。まだ青春をしっかり謳歌できてないぞ、死ぬのは早い。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 俺はまだ意識を働かすことができた。驚きだった。まさか自分が生きているなんて思いもしなかった。

 目を開けるとそこは古民家の一室のような場所だった。まさに日本というようなその部屋には俺のほかにもう一人、女がいるのが分かった。


「あら?目を覚ましたようね。」


それはどこか懐かしい声だった。

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魔王 うえはら @uehara6

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