第9話 カミルside

 僕の名前はカミル・アーツ。18歳。一応これでも侯爵子息。貴族が通う学院は男は全員武道の訓練が義務付けされている。僕は文官タイプで訓練が苦手なんだ。だから魔物の少ない西の森で学院のない日は剣の修行を従者達と共にしているんだ。


 ある日、森でいつものように修行しているとホーン5頭が突然襲い掛かってきた。僕達では太刀打ち出来ない。もう駄目だと思った時、ホーンの首がスパッと切り落とされた。


助かった。


次々とホーンが倒されていく。どうやらあの草むらに身を潜めながら魔法を撃っていたようだ。5頭を倒すとローブを着た女の人がホーンを浮かせて持って帰ろうとしている。僕は慌てお礼をしたいと言ったけれど、要らないとだけ答えて去っていった。


 従者共々呆気に取られてしっかりとお礼を言えなかった。従者達も『お礼はしっかりとするべきです。』なんて言うものだから僕達は翌日ギルドへと足を運んだ。


彼女にお礼をすると話す。すると彼女はお昼になったら討伐から帰ってくるからその後にと約束をした。彼女の話通りお昼にはギルドの受付で手続きをしている。


彼女の名前はギンコって言うのか。僕は行きつけのレストランへ彼女を案内した。


ギンコはローブを深く被り顔がよく見えなかったが、レストランへ連れて行って正解だった。


 ローブを脱いだ彼女はとてつもなく美しかった。一瞬で心を鷲掴みにされたような、雷に打たれたような運命的な出会いだと思ったんだ。はやる気持ちを抑えて食事を勧める。


 当初は魔物から襲われた僕を助けてくれたお礼として、庶民が入る事の出来ない食事を食べさせる事。これでお礼としようと思った。


ただそれだけ。


でも、ローブを取った姿を見てこの人を逃しちゃいけないと思ったんだ!


 彼女の食事する姿は平民より貴族に近いが、服や仕草は平民寄り。彼女は裕福な家庭に育ったのだろうか。


あぁ、この世に降り立った天使。なんて美しいんだろう。見ているだけで幸せになる。


 なんとか無理やりに近いが屋敷に招待できた。


が、邪魔が入った。


母と婚約者だ。彼女を平民と蔑み、強引に婚約者とお茶にさせられた。ローブを深々と被っている彼女は母からすると汚らしく思えたのだろう。急いで戻るが、後の祭り。


 青い顔をした従者から話を聞くと、母に屋敷から追い払われたらしい。すぐに従者と共に彼女を探すが見つからない。彼女を手放したくない。


必死になって数日程街の中を従者と共に探し回るが、門番からの話で膝を突くことになった。


彼女を追い出した翌朝、門番に街を出ると話していたようだ。


もう、この国には居ないのか。僕の女神。



あぁ、後悔しかない。

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