第7話
さて、今日は朝一番に討伐に出て昼には帰って来る予定。もちろんその報酬で数日分の買い物をして明日街を出よう。
朝一番に宿を引き払いギルドへ向かう。ギルド依頼掲示板には増えたオーク10頭とホーン5頭の間引きの依頼2件か。間引きかぁ、これなら1日で討伐出来そうだな。そう考え、依頼書を見ながら受付に向かう。
「君、この間ホーンを倒してくれた魔法使いだよね?」
その掛けられた声の方を振り向くと昨日の3人の若い男たちが居た。
避けて受付に向かおうとするが、進路を塞がれる。真ん中の一人が私の手を優雅に取る。中々のイケメンだね。どこぞの貴族の坊ちゃんみたい。
「是非、この間のお礼を。貴女を食事に誘いたいんです」
真ん中の貴族様はキラキラオーラを発している。面倒だなぁ。手を振払おうとするけど離してくれない。断っても後々大変そう。
「分かった。昼、帰る。奢ってくれればいい」
そう言うと、受付に討伐依頼書の手続きをする。さっさと終わらせるわ。
東の門番の所へ行き、森の中に入る。東の森は最近魔物が多いらしい。西の森は探すのに苦労したけど、東の方はオークもホーンも沢山居るわ。
【ウィンドウスラッシュ】でガンガン狩って縄で討伐した物を縛り、浮遊魔法で浮かせ持って行く。思ったよりオークとホーンは楽勝だし、日銭も稼げていいね。自然と笑顔になる。
昼前にギルドに帰り、報酬と素材買い取りをしてもらっていると3人が待っていた。
「待っていたよ!」
「分かった」
「ギンコさん!今日の報酬と素材買い取り代30万ギル入れといたからね」
「君はギンコって言うのかい?よろしくね。ギンコ。僕はカミル・アーツ。カミルって呼んで」
カミルに連れて来られたのは超高級料理店。カミルは絶対貴族だよね!?貴族に捕まったよー。面倒だわ。城の人達を思いだしてちょっと鬱。
「カミル様お待ちしておりました。窓際のお席をお取りしております」
案内され、店員さんにローブはお取り下さいとローブを剥ぎ取られた。ぐぬぬ。
仕方がないと気分を取り戻し振り向くと3人の男たちはローブを取られた私をジッと見つめてる。髪の毛跳ねてたか?それともホーンの血糊がまだ付いていた?仕方ない、気にしない作戦だ。席に着くか。まだジッと見てくる。
「何?」
「いや、ギンコは天使だったんだね。こんなに可愛い子との食事出来るなんて嬉しいよ」
はて?顔を見て可愛いと言ったのかな?天使って程の可愛さじゃないのだが。この世界の美的感覚は私と違、う・・・??
「何でもいいよ、好きな物を食べて」
お言葉に甘えて高そうな品物を頼む。
「ギンコは好きな人いるの?」
「いない」
「婚約者は?」
「いない」
「家族は?」
「いない」
「僕の家に遊びにくる?」
「行かない」
「嬉しいなぁ。僕の部屋見に来てくれるなんて」
これだけ愛想悪いし断っておるのにへこたれないなんて…。頭沸いてるのか!?カミルとの会話にイライラしながらも目の前に置かれた食事に手をつける。
ホーンの煮込み、美味い。ついつい頬が緩んでしまう。
どうやらカミルはこの近くに住んでる貴族様だそうで、自分を鍛える為に日々従者達と狩りに行っているらしい。
今回はオークを倒している間にホーン5頭が横入りし、不意を突かれたらしい。本当かは怪しいな。まぁ、聞かないが。そろそろ明日の為に買い出しに行きたい。
高級料理に舌鼓を打ち、デザートもしっかりと頂きました。はぁ、余は満足じゃ!なんて思いつつ、この後の買い物の事を考える。早く行きたいなぁ。そろそろ行くか。
「食事、ありがとう。じゃあね」
ローブを着て店を出ようとするが、従者から止められる。
「是非、屋敷へ」
ご機嫌なカミルと従者は私を屋敷へと半強制的に連れて来られる。やっぱり貴族の家はでかいな。屋敷に入ると玄関ホールで女の人と鉢合わせとなる。
「母上、丁度良かった。この方が僕の命の恩人、ギンコさんです。僕はこの方と結婚したいと考えています」
「は?」
つい言葉が出てしまったよ。お礼が結婚ってどういう事だ??しかも私は同意してない。
「カミル、貴方は婚約者が居るでしょう?こんな平民連れてきてどうするのよ。汚らわしい」
汚くて悪かったな。有無を言わさず連れて来られて悪く言われるってどうよ!?国もアレなら貴族もアレだな!黙ってはいるがまた思い出して怒りが沸々と湧き上がる。ローブを頭から深々と被っているから表情は分からないだろう。陰気くさいとでも思われてそうだ。
「カミル様。お待ちしておりましたのよ。さ、丁度お義母様と中庭にお茶をする所でしたの。私とお茶しに行きましょう」
どうやら義母親と中庭でお茶をするために歩いていた所を私達と鉢合わせしたらしい。
「え、あ、ギンコと…」
カミルはえっ、あっ、と言いながら綺麗な御令嬢に連れて行かれたわ。よし、今の間に帰る。
「帰る」
「汚らしい平民、二度と敷地に入らないようにね」
カミルの従者は私を引き留めようとしていたが、カミルの母親に言われ、私は屋敷を追い出された。なんだよ。意味分かんないよ。庶民は家畜位の感覚なのか?酷いな!貴族。
まぁ、今の間に出国の準備するかな。因縁付けられて追いかけて来られても困るし。
私は追い出されたその足で薬屋に寄り、ポーションや毒消し、麻痺治しの薬を購入した。
次に向かった市場では日持ちしそうな数日分の食料や調味料を。冒険者専門店で洋服も少し買い足したり、テントや寝袋などを買う。
旅の準備もバッチリ。
思った以上に時間を取られたので、引き払った宿に戻ってまた1泊する事にしたわ。
明日は早朝出ることにしよう。
マジックバッグあって良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます