召喚されましたが、失敗だったようです。恋愛も縁遠く、一人で生きて行こうと思います。
まるねこ
第1話
突然の自己紹介でごめんなさい!
私の名前は牧野 楓。24歳。父、母、妹の4人家族。恋人は大大大募集中。
この春から晴れて一人暮らしとなり、毎日仕事とアパートを行き来する生活を送っているわ。
休みの日ははジムで汗を流したり、料理を作って日々、自分レシピを増やすべく頑張っている。顔は、可愛い方ではあるかな!?
知識欲は豊富でよく小説読んだり、気になった事は即検索するのが癖。
ある日の仕事中にそれは突然起こったの。
「課長、今から書類を3階の総務に届けてきますね」
立ち上がり、言葉を発した瞬間に私の足元に円陣のような模様が浮かび上がり身体が光に引きずり込まれる感覚。
課長や周りの同僚は驚いた顔をしていたのが一瞬だけ見えた。
「え、何?」
私の口から言葉が溢れると同時に景色が変わる。
「おぉ。成功だ。聖女様の召喚が成功したぞ」
え?どういう事かな?よく分からない。聖女様の召喚??何人ものローブを着た人達が私を取り囲んでいる。え、やだ。怖い。
周りを見渡すと会社では無いどこかの部屋のようだ。私を取り囲んでいるローブを着た人が一人前へ出て話しかけてきた。
「聖女様。聖女様のお名前をお教え下さい」
え。知らない人に名乗っちゃ駄目だって母が口を酸っぱくして言っていた事を思い出す。
「桜」
咄嗟に偽名を名乗ってしまったけれど大丈夫だよね・・・?
「桜様、早速ではございますが、この水晶に手を翳して下さい」
絶対拒否権ないよね。目の前に出された水晶に手を翳す。
ふと、この光景に気がつく。もしや、これはラノベ界で有名な魔法判定!?私、魔法使いになれちゃう!?さっき聖女様って言ってたし、聖女っちゃうのかな?
・・・水晶変化なし。
はい。残念でしたー。
騒つくローブ集団。いや、私、よくよく考えなくても魔法なんて使えない世界からきたしね?無理よね??
何、このチーンって雰囲気。居た堪れないのだけど。魔力無しって事は用無しよね!?
やべー。この状況。どうやっても街にポイッと放逐されるのが目に見えてるわ。
「桜は聖女様では無かったのか。仕方がない」
はいっキタコレ!一気に格下扱い!なんなの!?
老人は憮然とした表情のままさっさと部屋を出て行った。ゾロゾロと後に続くローブ集団。え?まさかの放置プレイ!?あ、一人のローブを着た男の人が駆け寄ってきた。
「桜様、とりあえずここの部屋を出ます。着いてきて下さい」
私は言われるがままローブの一人に付いて行き、どこかの客室と思われる個室に案内された。
「えっと、まず、どういう状況なのか教えて?」
私はローブの人に促されてソフィアに腰掛けながら質問した。
「桜様。ここはローマン王国の首都カナタの城の中です。この度、陛下から聖女を異世界から呼び寄せ、騎士達の魔物討伐に聖女を使って効果を上げよと指示がありました。
私達は古い文献を漁り、何年も掛けてこの聖女召喚に心血を注いできたのです」
「んで、来たのが魔力なしの私なのね?これから私はどうなるのかしら?」
ローブの人は少し考えた後、私に答える。
「今、国王陛下、宰相や大臣達の話し合いが行われているかと思います。魔力の無い桜様は残念ながら国民として街に降ろされるかと」
やっぱり放逐か!誘拐されて捨てられるのか。酷いな!この世界。それに話を聞けば聖女とは名ばかりだよね?聖女を使って効果を上げよって。奴隷じゃね?最悪だわ。
私は突然連れてこられた驚きと老人の態度や人を人とは思っていない国王の考えに怒りや苛立ち、色んな感情がごちゃ混ぜになり叫びそうになるが、ローブの人に当たるのはお門違いだと思い必死で叫ぶのを堪えていた。
暫くすると侍女と思われるお姉さんがノックして入室する。どうやら私は国王に呼ばれているようだ。ローブの人に大丈夫ですか?と聞かれながら謁見室まで案内される。
謁見室はやはりラノベで描かれているような赤絨毯に調度品や絵画が飾られており、中央の椅子に座っている男がこの国の王なのだろう。ラノベすげぇな!まんまだよコレ!ちょっとラノベに感動しつつこの国の王とご対面。王の横には宰相と思われる人物がいる。王と宰相の両脇に立っている数名は大臣達か?
「其方が異世界から来た桜か。魔力なしだと聞いた。残念ながら元居た世界に帰す事は出来ん。一国民として街に降りてもらう」
「勝手に誘拐してきてそれは無いんじゃないの?酷いよね?王自ら誘拐指示。犯罪しといて要らなくなったらポイ。最低な国なのね。いいわ、出て行くわ。でも、出る前に最低限この世界の知識と必要な物一式、街に暮らすまでの資金を頂戴」
「良かろう。後は宰相、任せたぞ」
超短時間の謁見でした。あー最悪。絶対この国から出てくわ。
与えられた個室に戻ると早速、宰相にこの世界について教えてくれる人を付けて欲しいのと、私に合った一般的な武器と最低限の身を守る術を騎士に教えてもらう事。街に降りて職に着くまでの衣食住の為の費用の用意をお願いした。
流石に宰相は思う所があったようで私の希望は叶えてくれるらしい。まともな人も居ることはいるのね。
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