推し本

なつのあゆみ

第1話 夏の庭-The friends-/湯本香樹実


中学校一年の春だった。図書室で真っ白な本を見つけた。カバーがない。どんな本だろう。本を開いて、たちまち夢中になった。

初めて読む文体だった。ストーリーも面白いが、圧倒的に文章で惚れた。

カバーがない真っ白な本。

それが「夏の庭-The friends」


あまりにも文が好きで「小学校6年生の男子三人組が、死にそうな爺さんを監視する」という大胆な設定が、奇妙だとか思わなかった。

少年たちが、老人の死を見たがる。

そう書くとホラー小説みたいだな。

でも違うんだ、そうじゃない。

小学校6年生の無邪気さがなくなっていく好奇心が、死という負に惹かれていく、成長の過程なのだ。

少年たちは変化の中を生きている。


爺さんは爺さんだ。

変わらぬの余生を送る中、ひょっこり現れた少年たちに戦争の体験話をしたりする。

映画も観たが、爺さん役の人がその戦争体験を語るシーンが印象的だった。


私は夏の庭から湯本香樹実さんの作品に惚れ込み他作も読んで「この本を書いた人は大人なのに、なぜこれほど子供の気持ちがわかるのだろう?」と不思議だった。


夏の庭は、夏になると思い出す名著である。

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