第14話
「筋肉痛で動きたくなくなるなんていつぶりだよ。」
一度身体を動かせば軋む音が聞こえてきそうなくらいギチギチに筋膜が収縮している気がする。
その体に鞭を打ち盗賊たちの元へ向かった。
騎士や姫は目を覚ましておらず盗賊の頭領と思わしき人物は至って冷静に目を開いてこちらを見ていた。
「今から口を動けるようにするが不用意に大きな声を出すなよ。奴がまた起きるかもしれない。」
盗賊はコクリとうなづいた。
「オレらが狩場に使っていたところにあんな化け物がいるとは知らなかった。」
この盗賊は先程の戦いを感じ取ったのだろう。
だから大声も出さなかったし冷静になっていた。
「ならとっとと転移して戻れ。」
「ああ、ならこの縄を解いてくれねえのか。」
「解かねえよ。」
「なら俺はあれにとっ捕まってっけっか?」
「あいつらの縄も解かねえよ。」
「なら良い。」
コイツは盗賊だ縄抜けくらいできるのだろう。
騎士の縄をほどかないことをするとほっとしたのか案内し始めた。
「ここが俺たちが普段使ってる転移陣だ。」
陣と呼ぶにはあまりにも歪な形をしていた。
36角形、しかし一部が欠けているように見えたり少なくとも球体というよりは長方形、平行四辺形寄りの楕円形の形が象られていた。
「今思えばこれはアレへの生贄を送るために使われた陣なんだろう。」
「そうか。ならもう使わないことを進めるぞ。」
「あんたは来ないのか?」
「行かねえよ。歩いていくから楽しいんだろう。」
「そうかい。まああんたみたいな傷を負っている人間は戦場帰りの奴らでも少ないし、むしろ生還しただけでも奇跡なんだろう。俺には解らない修羅場をくぐってきただけのことはあるぜ。」
何を勘違いしたかはわからないが背中にうっすらと見える傷跡を戦場でつけたものと勘違いしたらしい。
これはこれで好都合だと俺は盗賊から情報を引き出せないかアプローチをかけてみた。
「俺は戦場の出ではない。」
「なら何かに襲われたのか。」
「ああ、そんなところだ。それで少し質問がある。神の呪いについて知っていることはあるか?」
「神の呪い?」
「ああ。」
「そいつは俺の知る範疇の中では一つだけだな。」
盗賊が話すには稀に非業の死を遂げた生物が強い恨みを持って神に昇格することで呪いを受けることがあるらしい。
恨みに対する関係のあるものが呪いを受ければ即死だが関係のないものが呪いを受ければ代償を受ける代わりに強力なスキルを超えた超人とも呼べる力を手にするらしい。
代償は様々だ。
味覚が無くなるモノ
性欲が無くなるモノ
嗅覚が無くなるモノ
髪の毛が無くなるモノ
性が無くなるモノ
代償は無くなること、それが絶対条件だと告げた。
「なら俺のは違うのか。」
「もしかしてその傷は呪いなのか?」
「遠からず近からずだな。この傷は治癒することがない。」
「確かにそれなら呪いの線が高いが…………。」
「今は良い、俺は厄介ごとが嫌いなんだ。だからとっと帰ってもらえるか。」
「あ、ああ。まあ俺らは捕まるから二度と会えないとは思うがあんちゃんも良いことがあると思うから元気でな。」
そういって縄に縛られたまま彼らは帰って行った。
「なんだよ縄を解けるわけじゃないのか。」
◇◇◇◇
「ふう、とりあえず元いた道に戻ったか。」
盗賊は縄を解ける技能は持っていた。
だが自分が捕まると信じてやまないのは転移先に騎士が居ることに起因する。
「貴様が姫様を攫った盗賊だな!」
「おっと姫さんがどうなっても良いのか?」
「く。」
「俺からの要求はただ一つ、コレット村の税率を前の領主の税率に戻させろ!戦争でもないのに税率を上げるバカな真似をした王族に責任を取ってもらう。なんのことのない要求だろ。」
盗賊は領主が成り代わり圧政を敷かれていた村の住民だった。
だから高そうな服を着ている貴族を襲い、現状を変えようとしたのだ。
盗賊の居る土地は日本と違って(日本もそこそこ緩い)法律の緩い国だった。
貴族が絶対ではないがバレなければ犯罪ではないかとでも言うように平気で圧政引く。
王族も今まで国の政治を貴族に任せることこそしなかったが傀儡のようになりつつある世の中だった。
「な、なにを!」
「やめなさい。」
「お、王女様。」
「申し訳ございません。我が国の民を虐げていたのに知らぬふりをしていた王族である私では背負っても背負いきれない責任です。此度は国王、父上、ひいては国の代わりとして非礼をお詫び申し上げます。」
ナイフを突きつけらえれていた王女は襲われていたときとは打って変わって王の風格を表していた。
「姫様、王族たるもの平民に頭など!」
「痴れ者が!民に頭を下げることに意味こそあれど貴様ら貴族や他国に頭を下げることに意味が無いから下げぬ!それが解らぬや国の背負い前を託した者たちへの愚の骨頂ぞ!」
「は、ははあ。」
(*ノωノ*ノωノ*ノωノ)
救助しに来た騎士たちは一斉に平伏した。
「私たちはおじいさまのように強く、そして誰よりも危機を感じられる存在にならねばなりません。私はその存在になるためにあなたが必要です。私たちが危機を呼び起こすかもしれないと察知した人物と会話をしたあなたに。」
「起きてたのかよ。姫さん。」
「いずれ、彼にも自信を持って頭を下げられるような人にならねばなりませんね。」
「そりゃそうだな。」
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スライム道
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