第15話 祖父
彼らと別れた後賢者の家に向かった。
「とりあえず学校行くか。」
無料パスポートを使って自宅に戻った。
それから2か月ほどたった時。
テストも終わり後は夏休みだけになったころ。
マンションから傷に対して忌避感のない祖父のいる家に帰ってきている。
「幹、何か良いことでもあったのか?それにしばらく見ないうちに逞しくなったな。」
朝食のために料理を作っていたらじいちゃんに話しかけられた。
気が付かなかったが異世界に行って鍛えていたこともあり体格が変わってしまったらしい。
「なんだよじいちゃん。特に変わったことはねえぞ。」
「そうか、あああと弁護士さんから連絡があったがまたいつものか。」
「うん。」
「まあ、おぬしが悪いとは思っておらん。儂が戦争に居た頃はお前ほどではないがそれくらいの火傷跡をつけていた子供がいたもんじゃ。」
じいちゃんは紛争地帯を渡り歩いて傭兵をしていたらしい。
人も何人も殺している。
だから家族も寄り付かない。
でも幹に対して保護者をやっているのは幹が気にしていないからというのが大きかった。
「理解ある連中は儂みたいな奴か、医者くらいのモノかもしれんが人と関わることを断ってしまって日ノ本の社会では生きていけん。」
「わかってるよじいちゃん。」
「わかってるならええ。今は顔を見ずとも人と関われる便利な世の中だ上手く利用してくんじゃぞ。」
俺は朝食を取り後片付けをして学園に向かった。
学園に向かう途中見慣れない車が泊っていることに気が付いた。
「フェラーリ250GTO…………。」
過去数回にわたって高額落札をされてきた名車中の名車にしてレーシングカーとしても超有名。
この名車が路地に在ろうものなら盗もうと画策する輩が後を絶たないに違いない。
だがそれを守るためのような黒いバンが数台、それに黒服が数十人体制で取り囲んでいることから本物度が増していた。
「うちの学校頭いい人多いし金持ちの一人や二人居てもおかしくないけど授業参観か何かをするのか?」
この高校はいつでも保護者の方が授業参観に来てもいいシステムになっている。
稀に元問題児だった生徒のことを見に来る保護者も居るには居るためこのフェラーリ250GTOに乗ってきたと思われる人もその保護者の一人だと考えていた。
「でもこれだけ居るって極道もんかなんか?」
黒服のおじさんの前を通り過ぎながら教室に入っていく。
「なあ、お前ら今朝って言うか今も居る黒服の人たち誰の使用人か知ってる?」
「知らない知らない。あのヤクザが連れてきたのかと思ったけど違うみたいなんだよね。」
「じゃあ誰なんだろう。けどアレ趣味悪くない?」
「うん、学校をほぼほぼ占拠するくらいの警護の人たちを連れてきてるし相当お金を持っているんだろうね。」
生徒たちの会話はとにかく俺の堕とせる材料がないか陰口を共有し合う。
俺が来たのは朝礼間際のためすぐに教師が来る足音が聞こえた。
「おまえら夏休み間際ではあるんだが転校生が来た。
正確には編入という形で来たと言った方が正しいがその子は小学校高学年から今に至るまで病気で学校に行けていなかったので皆も仲間外れにしないように接してくれ。
じゃあ入ってきてくれ。」
この夏休み前に転校生、編入生が来るのは珍しい。
生徒たちは興味津々と言った感じで入ってきた転校生の方を見ていく。
入ってきた転校生は3センチくらいの短髪だから男子に思えたがスカートを履いていることから女子だとわかった。
「初めまして、加藤 明日香と申します。今まで薬の関係で髪が生えていなかったのでこんなに短い髪ですけれどもこれからは伸ばしていく予定です。」
このとき、俺は異世界での生存競争が楽しすぎて白虎に願った人物、加藤 明日香のことをすっかり忘れていた。
転校生が来たくらいにしか思っておらず、クラスの人間も髪が短いだけかなりの美人が来たとはしゃいでいた。
「それでは刀赤の隣が空いているからそちらに座るように。」
「先生納得いきません。こんなヤクザの隣なんて転校生が可哀そうです!」
「そうだそうだ。」
誰かが言ったのを皮切りに呼応するように抗議の言葉をどんどん張り上げていく。
「お「やめてください!」
大山先生が喝を入れるかに思えたが加藤さんが遮った。
「私はこの人が優しい人だって知ってます!
あなたたちに何が分かるんですか!
私のことは同情しようとするのに彼のことは同情することはできないんですか!」
彼女の言っていることは正論だ。
正論だから何も言えないわけでもない。
「そ、そんなのこいつがヤクザの息子だから…………。」
「その証拠はどこにあるんですか。
私が病院で彼に会うにあたって身の周辺を勝手に調べさせてもらいましたが彼はまごうことなき一般人です。
帝王切開で生まれてくるときに在ってはならない不幸を受けてしまっただけの人です。その人に同情こそすれど非難することはあんまりじゃないですか。」
一触即発に成っていたクラスで大山先生がチョークを手に取った。
「なあ、お前ら社会ってのは多数決で決まることが多いが多数決が正しいとも限らないってことを知ってるか?
それを教えるために学校ってものがあるんだ。
お前らにそのことを教わっていないというのなら小学校からやり直してこい!
俺を辞めさせたいから訴えるのならそれも良いだろう!
だけどな俺は教育委員会に報告はするぞ!
小学校修了過程を終えていない生徒しかいないってな!」
ベテランの教員は誰よりも綺麗に見えた。
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スライム道
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