第10話
「ふわぁ寝たけど起きている気もするって変な気分だな。」
並列思考スキルで残高をコツコツとため込んでいたので時間的には十分。
睡眠時間8時間なのでかなり儲かったとも思った。
「86,400円か、これを変換するといくらになるのやら。」
『現在為替は1円につきザーハック王国銀貨1枚となっています。』
「銀貨一枚ってどのくらいの価値なんだ?」
『銀貨一枚でザーハック王国なら農民の一世帯が1年間くらせる価値があります。』
「もしかして国によって貨幣の価値が違うのか。」
『はい。』
今は良いがきちんと調べておかなければとは心のメモ帳に書いておいた。
「とりあえず昨日寝る前に見ていたお気に入りタグをつけていた商品はこれをチャージすればすべて買えるか?」
『はい、全て購入可能です。』
昨日寝る前に一通りのスキルを見て、必要そうなものをピックアップしていた。
「じゃあスキルを購入して無料パスポートを使用する時間は停止状態でだ。」
『かしこまりました。良い異世界ライフを。』
こうして俺の世界は広まっていくのだ。
「ん、ここが異世界ってところか。っつうかここは家?」
何もわからず辺りを見渡しているとテーブルの上に紙切れを見つけた。
この手紙を読んでいるのは異世界の旅人かな。
僕はヴィンチ、昔は賢者と呼ばれていたものさ。
実際は異世界人の人たちと接触して知識を深めていた。
まあ、ズルだよね。
だからね、今まで私に知識を与えてくれた異世界人に恩を返したいと思ったんだよ。
君には私が集めたこの世界の技能をここに書き記しておこうと思うから好きにつかってくれ。
その手紙を読むと手紙が光りだして一つの本になった。
「どういう原理かはわからないが賢者って人は異世界人の場所を知る技術か何か持っているのかもしれないな。」
その本は一先ず懐にしまって家の中と外を探索していく。
「これは、生物か?」
外に出た時に見たことも無い動物がいた。
それだけなら異世界だからと飲み込めたかもしれない。
だがどんな物理的法則を持っても立つことすらままならない筈の巨体と体重を持つイノシシがそこに居たのだから。
一歩踏めば地面が沈み、軽く地層が揺れ動く。
そして足をどかせばくっきりと足跡が残っている。
「マジかよ。少しばかり舐め過ぎていたぜ異世界。」
空を見ればペンギンが空を飛んでいる。
飛べない鳥とは何だったのかとあざ笑うように見える異世界は自分の悩みが馬鹿らしくなるくらい生存本能を刺激する世界だった。
「俺が取ったスキルも役に立つのかわからねえ。
しばらくこいつを読んでみるしかねえな。
幸い、ここにはあのクリーチャーどもが避けて通っているし修行するしかねえな。」
十中八九賢者が張ったであろう結界かそれともモンスターのみに効く毒草などを植えているのだろう。
もちろん異世界への無料パスポートで帰ることもできる。
「でもよう、ここで生存競争を勝ち取ったら、何か俺は変われそうな気がする。」
既に変化はしてきているだろう。
新しい土地に順応しようとする、生物特有の本能が自身の脳にアドレナリンやエンドルフィンなどの脳内麻薬を多量分泌させ生きる基盤を作らせようとする。
いわゆるハイな状態だがそれだけではないだろう。
刺激以上の現代社会においてまず感じることのない身の危険、命の剥奪という恐怖を身をもって感じたこと。
稀にだが怒るときの方が頭が冴える人間が居るように人は興奮すればするほど脳が馬鹿になるのではなく脳の痛みを感じるというブレーキをかける暇を与えることを許さずに現状を打破する行動をさせるためではないかと刀赤は考えていた。
「俺の選択したスキルの確認だ。」
人間言語理解
人間の分かる言葉しか理解できません。
でもそれだけあれば十分だよね。
ウイルス耐性
未知のウイルスに対してもある程度の抵抗力を高めてくれます。
しかしあくまでも抵抗力を高める行為になりますので助かる保証があるわけではありませんのでご注意を。
病原菌耐性
未知の病原菌などに対してもある程度の抵抗力を高めてくれます。
しかしあくまでも抵抗力を高める行為になりますので助かる保証があるわけではありませんのでご注意を。
炎熱耐性
炎熱に対してある程度の丈夫な身体にします。
しかし許容体温が変わるわけではありません。
あまりにも長い時間炎熱にあたると普通に死にます。
寒冷耐性
寒冷に対して燃費の良い身体になります。
しかしカロリー消費は通常時よりも多いことには変わり有りませんのであまり頼り過ぎないように。
金属毒耐性
金属毒(鉱毒)に対しての耐性を設けます。
致死量を3パーセント超える場合は死に至ります。
タンパク質毒耐性
タンパク質が主となる毒に対する耐性を設けます。
以下感知スキル
上記耐性スキルを感知するスキルに加えて
敵意感知
殺傷意に対する感知をします。
また見下すなどの視線も感知します。
「これだけなら立派だが俺はこの世界で気配を消さなければ生きていける気がしない。」
まずの第一目標は気配を消すこと。
今後の方針が決まった。
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スライム道
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