第9話
『並列思考スキルの付与及び異次元操作対応のキャッシュカードの作成をさせていただきます。
当口座はどこの銀行のATMも使用可能ですのでお客様の世界で目立たずにお引き出し可能でございます。』
全てのATMで使えるってどういったシステムなのかはわからないがICチップなどの簡単に情報を変更できるってことなのだろうか。
その場合通帳とかはどうやって見ればいい?
『通帳に関しましてはいつでも詳細な情報を閲覧することが可能でございます。』
「あと今回のこととは別件で聞きたいことがあるんだけど貴方の部署で聞いても大丈夫?」
『では先に御用件をお伺いしてもよろしいでしょうか。』
「異世界への無料パスポートのことなんだけど。」
『それでしたらこちらの窓口でもお伝えすることが可能でございます。
そちらの商品は弊社ショップスキルの取扱商品が存在しない世界に居る方へのサービスとなっております。』
「そっか、それで現実世界、この場合はオレの出身地となる世界と異世界への無料パスポートを使用した場合って時間とかはどうなるの?」
『解答いたしますとそれは使用される際に変更可能でございます。停止、およびスピードの変更などお客様が渡界毎に設定していただきますのでご安心ください。』
変更可能ということは自分の都合で色々調整可能。
「こっちの世界で逃避行しようが、
あっちの世界で逃避行してもどっちでも構わないともとれる発言なのだが、
警察、もしくはそれに準ずるものがいた場合、責任はどちらが取るのだろうか。」
『その質問に対しては世界の管轄下、世界主、あなたの世界で言う神、唯一神、創造神、様々な呼び名が存在しますがそのような者たちが対処いたします。』
警告だ。
自分たちの口では言わないが他国に行ったときに他国の法が適応されるのと同じように異世界でもやり過ぎると痛い目に合うのは解っておけと言いたいのだと思う。
安易に自分たちが責任を持つとは言わないことから責任はそちらにもある程度は存在するが大本はこちらに責任を取れと言いたいのかもしれない。
「まあそれが普通だろうし構わないよ。」
『そう言っていただけるとこちらとしても幸いでございます。』
「それで俺が異世界へのパスポートを使うにあたってその管理者とやらに抵触しない程度のスキルは存在するの?」
『もちろんでございます。ただし現在お客様の残高がございませんのでチャージをお願い致します。尚価格は現在日本円に換算しますと20万円前後です。』
「わかったけどしばらく学校があるから3日後にまた尋ねるけどその時はまたその時のレートになっているって認識で良いの?」
「はい、為替は随時更新されていきます。世界情勢によって変わる国々としてレートや世界共通単位としてのレートなども存在しますのが今回お勧めしたい商品は世界共通単位ですので戦争がどこかで起こるたびに変化する価格となっています。」
まるで株取引のような中毒にならないか心配なスキルだなと思いつつ俺はそっとショップスキルを閉じた。
「さて並列思考スキルって奴を試してみますか。」
俺は眠りにつきながら並列思考スキルを発動させた。
眠りにつくとまた夢を見た。
「なあ鬼のよ。我らが宿主はどこか不安定ではないか?」
「そんなもん人間だから当然だろう。」
「そうか?私は数多の人間を見てきたがここまで自分の欲と望みが一致していない人間は初めてだぞ。」
「確かにこいつは俺が憑けてしまった呪いを剝がしたい。治したいとは思っていただろうよ。」
「ならなぜ?」
「それはこいつの欲であって望みじゃねえんだよ。白虎、お前さん人間を勘違いしてはいないかい。」
白虎は静かに押し黙った。
白虎の知る人間のほとんどは何かしらの目的のために生きているのが殆どで漠然と生きるモノも居たが目先の目標を持ちそれに向かって利益を上げようとするのが人間だと思っていた。
「白虎、人間ってのは確かに欲深い生き物だがな。不利益をどの生物よりも好む生き物なんだよ。」
幻なのか盃のようなものが現れて鬼がそれを煽った。
「っプハ、キンキンに冷えたビールってのは俺の好みじゃねえな。だがこいつはこいつで良い。」
盃の癖にビールかよ。
的外れなことを思いつつ夢の中をさらに意識を深く潜り込むように観察する。
「ほら、ビールってのはそもそも香りを楽しむための酒だったんだよ。もちろん水代わりにもしていたそうだがビールの品証は香りと味で決まっていたそうだ。でもよ、それを台無しにしてまでのど越しを取った民族も居るんだぜ。俺は香りと味がいい方が食い物としては上手いと思うけど風呂上がりの爽快感をより一層際立たせたいときなんかはこの冷たくしたビールは便利だろうよ。」
「それは食い物の話だけだろう?他には無いのか?」
「そうだな、楽しんでやる苦労は苦痛を癒すものだ。こいつはサウナなんかの蒸し風呂に入ったときに思いついた詩だ。」
「まてまて話が逸れているぞ。それは不利益ではなく益もある行為ではないか。」
「ふむ、ならそうだな。自分が死ぬ、もしくは壊れるときちんと理解した上で忠誠でも何でもなくただ死ぬために生きる人間を理解できるか?」
「戦場に行く兵士たちは皆、神に誓っていたが、それは忠誠ではないのか?」
「そんな奴らしかお前のところには来ねえだろうけどな。俺ら一族のところに来る奴らはたいがい違ったぞ。無心になりたいんだとよ。」
「無心か。」
白虎はまた深く考えだした。
「そう無心だ。まあうちらの宿主の場合は自分の正しさ、どんな人間も平凡を継続的に手に入れれば救った人間なんて見向きもしないってことの証明をしたかったんじゃないか。」
鬼は的を射た答えを話すが白虎はまだうんうん唸っていた。
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スライム道
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